2021 Fiscal Year Research-status Report
Japanese didactic resources for the teaching of probability
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19K14196
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
大滝 孝治 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (90750422)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教授人間学理論 / 教授相互決定性水準 / ヌースフィア / セミプロフェッション / 付随教授争点 / リソース / 確率 / 教師用専門誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度(4年計画の3年目)は,昨年度から引き続き,これまでに構築してきた理論的な視点・枠組みと収集してきたデータにもとづいて,数学教師のための確率指導や統計指導のリソースを分析してきた。えられた成果のうちで重要なものの1つとして,「主題水準への拘束(thematic confinement)」に関する詳細をいくつかの視点から明らかにできたことがあげられる。主題水準への拘束とは,「教師は授業を計画したり振り返ったりするときに,一授業レベルから一単元レベルの数学知識のサイズにしか焦点があてられない」という現象である。こうした拘束現象は教授人間学理論において以前から観察されているものであるが,重要な研究対象と捉えられてきたわけではなく,本研究のように確率・統計の視点からその詳細を明らかにしようする先行研究はない。本年度の分析では,確率・統計に関しての拘束現象が確認できたとともに,そこで生じている教師の焦点化のいくつかの傾向を明らかにすることができた。こうした成果は,教師の専門性の「偏り」の一端を明らかにするものであり,学術的に価値があるばかりでなく,「そうした偏りを自覚することは教師の職能成長のための重要な契機となりうる」という意味で,実践的な意義もあると考える。 加えて,データの分析を進める中でえられたフィードバックによって,理論の精緻化も進めることができた。本研究に必要となる理論的枠組みについて,かなり基礎的なレベルから十分に体系化することができたように感じている。この点についても来年度以降,論文などの形で発表していくつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの分析が順調に進み,その成果の一部が論文としてまとまってきている点は順調である。しかし,新型コロナウィルスの影響で特に国際学会への参加や海外研究機関への訪問が思うようにできず,海外の専門家との議論をとおして研究の成果をブラッシュアップする機会が不足した。本研究テーマの専門家は国内にはほぼおらず,研究の推進には国際的な交流は不可欠であるため,この点はやはりマイナスに作用しているといわざるをえない。しかし,まったくそのような活動ができなかったわけではなく,オンライン形式で可能な範囲で行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
なるべく多くの論文を書くことが次年度(最終年度)の課題である。すでに国内ジャーナルに投稿した論文も数本あるが,採用・公表へはいたっていない。おそらく,本研究の理論的枠組みやテーマが国内の研究情勢にマッチしていない。こうした関心の不一致には当初から気づいていたが,教師への新たなリソース供給の意図からあえて国内雑誌に投稿していた(日本語で書けば日本の教師も読みやすい)。しかし,やはりこの方向性には無理がありそうなので,最終年度は海外の研究者向けにいろいろな成果をまとめていきたいと考えている。あわせて,国内向けの発信の方法も別途検討したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナウィルスの影響で国際学会への参加や海外研究機関の訪問ができなかったためである。こうした経緯から,次年度使用額は国際的な活動をできる限り行なうために使用する予定である。
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Research Products
(4 results)