2019 Fiscal Year Research-status Report
電気・電子回路の設計力育成を目指したハンズオン教材の開発と評価
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19K14206
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
石橋 直 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (80802842)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 科学概念 / 回路設計 / 技術科 / 工業科 / 電気回路 / 電子回路 / ハンズオン / 設計学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,学校教育における回路設計学習に焦点化し,設計学の視点から学習者の認知面について評価テスト等を通して解明するとともに,回路の理解から設計・検証までを手早く製作しながら学ぶことができる,ハンズオン(hands-on:実物に手を触れて学ぶ)教材と学習プログラムの開発を目的としている。 初年度においては,回路設計に必要となる科学概念を見出すために,工業高校生を対象とした回路概念テストと回路図作成テストを実施し考察した。回路概念テストはDIRECT(Determining and Interpreting Resistive Electric Circuits Concepts Test)に基づき,回路設計と関連性の高い16題と独自作成問題2題で構成した。回路図作成テストは,要求される機能から回路を考え配線描画する7題で構成し,設計学の観点からその内容を回路概念テストの逆写像に位置づくよう設定した。テストの結果,接続に関する概念理解が回路設計力に深く関連していることが明らかとなった一方で,短絡・電流・電圧・電力の概念理解については生徒にとって困難であることが分かった。 教材開発については,汎用のディスクリート部品を紙面に貼り付けることで電気・電子回路を構築できる導電性テープを用いたハンズオン教材を試作し,中学生を対象に試行実習を行った。試行実習では昇圧回路の一種であるブロッキング発振回路を製作させた。中学生は導電性テープを用いた回路製作に対して困難さを示すことはなく,興味を持って取り組んだ。しかし,接着の精度やシートの曲げによって抵抗値に大きなばらつきが生じることから,安定した回路動作を望むには改良が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「評価テスト等による学習者の認知面の解明」については,回路概念テストと回路図作成テストによってその全体像を把握することができたため,順調に進展した。「ハンズオン教材の開発」については,安価な汎用部品で回路を構築できることが確認されたため,学校現場における実践やワークショップの展開の見通しが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
学習者の認知面に関しては,初年度の取組みが各種テストの記述結果の分析のみにとどまっており,回路設計における思考過程まで分析できていない。そこで次年度は,回路設計において生徒がどのように概念操作し,どのように思考しているかについて明らかにしていくために,プロトコル分析を通して思考過程を質的に分析することを計画している。 ハンズオン教材の開発に関しては,導電性テープの接着精度やシートの曲げによって動作に大きなばらつきを生じさせたことから,安定した回路動作のための部品選定や製作手順の見直しが必要である。次年度は本教材の製作事例を増やすとともに,動作の安定性を高めた教材へと改善し,中学校技術科や高等学校工業科の電気系科目の授業における活用を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
3月末にワークショップを計画し,そこで使用する部品代として予定していたが,コロナウィルス対策による中止を受けたことで残予算が発生した。次年度にもワークショップを計画しており,そこでの部品購入費として使用する予定である。
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