2020 Fiscal Year Research-status Report
電気・電子回路の設計力育成を目指したハンズオン教材の開発と評価
Project/Area Number |
19K14206
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
石橋 直 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (80802842)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 回路設計 / 回路概念 / 接続概念 / 中学生 / 工業高校生 / ハンズオン教材 / 導電性テープ |
Outline of Annual Research Achievements |
電気回路に関する概念理解と設計力の関連について工業高校生を対象に調査した結果, 回路設計には接続に関する概念理解が基盤的に働いていることを見出した。そこで,回路設計における思考過程を検討するために,設計時におけるプロトコル分析を行った。接続について尋ねる課題では,3つの思考パターンが見られ,その発話内容から,電流の流れの認識が正誤に関与していることが推察された。また,科学概念を誤った状態で理解している事例が見られた。そのいずれも中学校理科における電気の学習に起因するものだったため,中学校の教科書分析を通して要因を探索した。ここでは,中学校の教科書に示されているモデルを調査し,誤概念の形成との関連性について検討した。その結果,電流と電圧を説明するモデルにおいて,実際の電磁諸量の大小とモデルにおける図的表現の不一致が見られたことから,学習者の誤解との関連性が示唆された。 次に,回路教材としてのハンズオン教材の開発については,回路製作に用いる導電性テープの不安定性に関する課題が残っていたため,教材に最適な材料の検討を行った。ここでは,部品の接合の際に用いる素材として,導電性テープの他に,セロハンテープやステープラーを検討した。荷重試験の結果から,部品を接続する際の各テープ貼付け時の荷重は導電性に影響しないことが分かった。一方で,曲げ試験の結果,曲げに対する導電性の安定性においてはセロハンテープが優れていることが明らかとなった。しかしながら,セロハンテープは回路製作上の制約が多いため,下地を工夫した上で導電性テープを使用することが望ましいという結論に至った。 最後に,開発したハンズオン教材を用いた授業実践を公立中学校にて実施した。1人1セットで設計・製作が行える環境を整備し,技術・家庭科技術分野の授業において試行した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,電気回路の概念理解および設計力を測定する評価テストの開発・改良と,ハンズオン教材・学習プログラムの開発・改良を並行して実施し,これらを授業実践によって検証し,その評価を活用してさらに改良するというサイクルを回すことで研究を高度化することをねらいとしている。本年度を終えて,1回目の授業実践まで完了できた。これまで,初歩的な回路設計に基板となる科学概念理解として,回路の接続という点を明らかにしており,その実態の詳細について調査を進めることができている。また,ハンズオン教材の開発については,基礎実験を通してハードウェア的側面の課題を明らかにできており,改良の見通しも立っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,回路設計における基盤である接続概念の理解について詳細に検討する。ここでは,回路のグラフ的な性質に着目し,どのような回路図の示し方であれば理解しやすいか,あるいは誤りやすいかという認知的な特徴を明らかにする。また,接続概念そのものがどのように構成されているのかについて,電気回路の初学者と回路設計の熟練者それぞれの思考過程を調査することによって,回路学習および指導に有用な知見を得る。その上で,回路設計学習に適した学習内容・学習展開を提案する。 ハンズオン教材については,これまで部品の調達を容易にするためにディスクリート部品を用いていたが,導電性の不安定さに課題があったため,専用のシール部品を開発する。また,導電性テープの貼付に中学生が困難さを示す場面があったため,貼付を容易にするための治具を開発する。 上記の2点を進行しながら,学習プログラムを構築し,最終の検証授業実践を行うことを計画している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの蔓延により,学会活動が全てオンラインとなり,予定していた旅費の残高が発生した。次年度は,当初予定の費用に加えて,研究の途中で必要性が生じているプロトコル分析に用いるための機材購入を計画している。
|
Research Products
(6 results)