2022 Fiscal Year Annual Research Report
「反省的で生産的な批判的思考力」を育む国語科授業モデル構築のための実践的研究
Project/Area Number |
19K14208
|
Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
古賀 洋一 島根県立大学, 人間文化学部, 准教授 (00805062)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 批判的思考 / 論理的文章 / 教師の学習 / 学校司書 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間社会で生じる問題は、「多元論理の問題(問題を巡って対立的な主張が見られ、それらに優劣をつけるのが困難な問題群)」と言われている。本研究では、そうした問題を解決するために必要な力を「反省的で生産的な批判的思考力」と措定し、論理的文章の読みの授業を主な対象として、その学習過程や効果的な授業のあり方を検討した。主な研究成果は以下の三点である。 一つ目は、上述の批判的思考が発揮された姿を論理的文章の読み方へ具体化したことである。これまで補足的要素として扱われていた「反証」の要素に着目し、批判的思考力が発揮された姿を、「反証に着目して主張の適用範囲を限定すること」と「複数の主張を止揚・統合して広範囲に適用できる第三の主張を形成すること」の二つの局面から構成されるものと結論付けた。 二つ目は、実際の授業場面における上述した読みの形成過程を、教師や学習者同士の協同的過程に着目して解明したことである。そこから、学習者に批判的思考力を育むためには、対立する文章を読み比べながら問題を探究していくような授業が効果的であることも分かってきた。 三つ目は、協働的な授業づくりを長年継続してきた国語科教師と学校司書へのインタビュー調査を実施したことである。ここで司書との協働に着目した理由は、教科書外の文章を用いた授業を教師一人で構想することは非常に困難であると考えられたからである。調査の結果、司書と協働して授業を構想し、実践していくなかで、教師は国語科という教科の目的や内容への問い直しを迫られ、ゆくゆくは一人で探究的な授業を構想できるようになることが明らかになった。さらに、そうした協働が実現するための制度的・物理的な環境要因についても検討を加えた。
|