2020 Fiscal Year Research-status Report
保育現場における生き物介在型環境教育プログラムの開発と継続的な実践モデルの構築
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19K14212
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
森元 真理 東京農業大学, 農学部, 助教 (30611678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コミュニケーションデザイン / 幼児教育 / 自然体験 / 環境教育 / 保育者養成 / 生物循環 / 生き物への配慮 / EfS |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の本年度は、身近な生き物を題材とした「生き物を介した環境教育プログラム」に関する内容の充実を図るため、題材とする動物種をさらに増やし、幼児教育施設での活用を想定した実践プログラムの立案と教材(遊びツール)の開発を行った。昨年度は、土壌動物および園の飼育動物に関するプログラムを立案したことから、本年度については、自然環境や暮らしとのつながりに関連の深い生き物(身近な虫)をテーマとして選び、with COVID-19の状況下であっても保育室内で活用することの出来る遊びツール(絵探し絵本、大型模型仕掛けツール)をデザインした。作成したツールは、現場保育者とのオンラインによるインタビュー調査や実際の保育現場における活用を通して収集したデータ(幼児らのツールに対する反応、保育者に対する質問紙調査等)の分析から、本調査に向けたツールの改善点および課題の抽出を行った。 当該年度の成果として、幼児を対象とした環境教育プログラムを1種類(テーマ:ヒツジ)立案するとともに、関連する教材(遊びツール)を2種類(テーマ:身近な虫、ヒツジ)試作することができた。ヒツジに関するプログラムおよび遊びツールに関しては、感染症対策を徹底して予備調査を実施し、実際の保育現場への試験的な導入を実施した。その結果、遊びツールに対する幼児らの注視時間の高さや利用率の高さ、遊びツールに対するかかわり方等の量データおよび質データの分析と解釈から、本実践に対して幼児が主体的に参加し、他者と体験を共有しながら興味関心を高めていた様子がうかがえた。また、身近な虫については、暮らしと虫とのつながりを紹介する絵探し絵本を試作し、現場保育者および幼児教育の研究者らに使用してもらった上で、保育における環境教育の教材としての妥当性と課題点を調べるための半構造化面接を実施し、得られた結果を基にした改善版絵本を作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響により、プログラムの実践と評価にかかる予定の調整に時間を要したが、オンラインミーティングを活用し、現場保育者や幼児教育を専門とする研究者らの助言を得ることで、環境教育プログラムの立案および教材(遊びツール)開発のいずれについても予定通りに進行している。他方で、2020年の秋季までは、実践協力先との打ち合わせや実践自体が困難となったことから(COVID-19の影響により)、実践時期や調査手法の大幅な見直しが必要となった。しかしながら、教材のデザインや調査手法を当初の予定から変更するなどして、活用と評価が可能な方法を模索しつつ進めることができた。 本年度は日本保育学会第73回大会、日本自然保育学会第5回大会等で研究成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、2年目に立案したプログラムおよび遊びツールの改善について引き続き取り組むこととし、オンラインを活用したミーティングや調査手法を取り入れた本調査を実施することで、幼児および保育学生に対する環境教育としての効果を検証する予定である。昨年度には、オンラインを活用したミーティングや調査実施体制の一部を整えることができたが、今後のCOVID-19による影響も想定して、調査スケジュールと手法については、現在、協力者らと密に調整を進めている段階である。 また、各環境教育プログラムについては、取り上げた生き物(テーマ)同士のつながりを整理し、本研究における環境教育プログラムのキーワードである生き物同士のつながり(循環)を保育関係者に分かり易く理解してもらえるように資料や動画等で取りまとめ、Webアンケート等で評価してもらう準備を進めている。さらに、開発したプログラムや教材(遊びツール)の公開の形についても、現在の社会的な情勢を踏まえた上で活用しやすいコミュニケーションデザインを再検討し、具現化していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、COVID-19による影響で打ち合わせや実践による出張が相次いで中止せざるを得なくなったこと、コンテンツの取りまとめ方法としてwebサイトの外部委託が困難となったこと(需要の急激な高まりにより)、開発する教材デザインの変更に伴う消耗品の種類の変更や納品の遅延が生じたこと等が挙げられる。 繰り越した助成金については、今後、所属大学での出張許可が下り次第、訪問先と予定を調整して出張旅費として使用し、開発する教材のデザインに必要な消耗品の購入や公開に向けた取りまとめにかかる費用として使用する予定である。
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