2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K14220
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Research Institution | Chugoku Gakuen University |
Principal Investigator |
村井 隆人 中国学園大学, 公私立大学の部局等, 講師(移行) (80826157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育評価 / 批判的読み / 説明的文章 / Informational text / 複数テクスト / 大規模な評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は米国の新しい国語と算数のスタンダードであるCCSS(Common Core State Standards)の評価機構であるPARCCとSBACの評価問題例から説明的文章(Informational text)の問題を抽出し、訳出を行った。 まず、PARCCの例題は中学校段階までの訳出を行った。PARCCの例題で特徴的なのは、文字だけに依らない映像等を用いた複数のテクストの読みが求められていること。そして、複数のテクストを目的に沿って読みながら理解を深め、最終的に批判的な読みを短いエッセイを記述することで求められていることである。しかし、PARCCそのものが2019年度をもって活動を終了したため、高等学校段階の例題を十分に訳出することができなかった。現在、PARCCのシステムを基にした新しい評価機構(New Meridian)へと移行していることが窺える。 一方、SBACの例題は練習問題とパフォーマンス課題に分かれている。後者では、批判的な読みが求められる。SBACの評価問題は、大きく3~4つのテクストを目的に沿って読む枠組みが示される(これらは文字のみのテクストである)。そして、主に読解について確認する2つの問題を示した後、エッセイを書く課題が示される。高等学校段階では、テクスト内の情報をもとに、反論を想定して文章を作成するなど、論理的にも一定の水準を求める問題が設定されている。また、このSBACでは各学年に90程度の例題が用意されており、ランダムで問題が提出される。 どちらの例題も、複数テクストを基に与えられた目的に沿って批判的に読むことが求められる点が共通している。その中でもPARCCは幅広いテクストを扱っている点に特徴がある。一方、SBACの出題するテクストは従来の文字のみのものではあるが、例題が求める批判的読みの条件が学習者にとって明示的な点に特徴がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画書に基づいて、2019年度の主要目的である評価機構の例題の訳出について、ある程度達成することができているため、おおむね研究計画に沿っている。また、両者の例題の共通点として、複数のテクストを批判的に読むことに注目し、複数テクストの読みに関わる理論書を収集・検討している点も、2019年度の後半の計画に挙げていた評価開発の手法を明らかにするための方法の1つであり、これも計画に沿って研究が進捗していることを指していると考える。 一方で、PARCCが活動を終え、例題が入手できなくなった点において、研究に遅れが出ていると考える。PARCCのシステムを引き継いでいると思われるNew Meridianについては、まだ十分な状況把握ができておらず、こまで訳出した例題などをどのように扱うか再検討する必要が浮上した。この点が研究の遅れの1つである。 また、2019年度後半に顕著になったコロナウイルスの影響により、米国に赴き調査をすることが困難になった。その結果、当初予定していた、大規模な評価問題が米国の教師の指導や評価に与える影響についての調査を断念せざるを得なくなった。この影響は2020年度の研究計画にも支障をきたすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、本研究は研究計画に照らすと主に2つの課題を抱えている。 1つはPARCCが廃止されてしまったことである。PARCCが廃止されようと、例題の特徴や一貫性を検討することは、教育評価研究としての価値を失うことはないと考えている。しかし、PARCCが廃止されたことで、例題が入手できなくなったことで、高等学校段階との接続を検討することが困難になった。また、新しい評価機構として立ち上がったNew Meridianについても十分な情報を得ることができていない。 そこで、この問題に対処するために、New Meridianについての調査と検討を進め、New Meridianが公開している説明的文章の評価問題の検討を行うことを2020年度の研究計画に加える。 また、2020年度もコロナウイルスの影響によって米国に渡航し、教師にインタビューを行うことや、授業観察をすることが困難になった。そこで、当初の研究計画にあった、米国の大規模な評価の開発の手法の検討についてさらに文献調査などによって、研究を進展させることとする。
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Research Products
(1 results)