2020 Fiscal Year Research-status Report
多文化共生社会の実現に向けた器楽教育に関する日独比較研究
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19K14223
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Research Institution | Shiga Bunkyo Junior College |
Principal Investigator |
藤山 あやか 滋賀文教短期大学, 子ども学科, 講師(移行) (90838971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 器楽教育 / 初等音楽教育 / 多文化共生 / 国際比較 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目は、前年度(2019年度)にドイツ・ハンブルク州を訪問して収集した器楽教育プロジェクト “Jedem Kind ein Instrument”に関する資料整理を行い、JeKiプロジェクトの取り組み成果と課題を踏まえ、日本国内における多文化共生を目指した音楽活動の現状と課題を明らかにした。 多文化共生を念頭に置いた音楽科教育のカリキュラム構築、教材開発を行うことを目的とし、今年度はまず国内における音楽を通じた多文化共生教育の事例を調査し、主に滋賀県内を対象に、外国籍を有する児童が通う小学校において授業視察および講師インタビューを行い、初等音楽教育における器楽学習のカリキュラムや指導法の現状を調査した。また、滋賀県国際協会や長浜市民国際交流協会、市民ボランティア団体の協力を得て、地域における国際交流活動を概観することで、多様な文化背景持つ子どもたちの音楽文化への関わりの現状と課題をまとめた。 ハンブルク州のJeKiプロジェクトについては、昨年度に引き続き調査を進め、当該プロジェクトに携わる音楽講師のリモートインタビューにより、オンラインで実施した器楽学習の内容や成果発表会の様子について情報収集を行った。また、ハンブルク州のJeKiプロジェクトおよび類似する音楽教育プロジェクトに関する事例に関して、国内外の学会雑誌を対象とする文献研究を行い国際的な動向を把握することで、音楽を通じた多文化共生教育の基本的概念と実践研究を支えるための理論を構築することができた。そして、日独の音楽科カリキュラムおよび授業の運用方法や指導法の比較分析を行うことにより、多文化共生を念頭に置いた継続的な教育実践を行うためには、学校と公的機関や民間団体、任意団体など地域社会とのパートナーシップによる連携が必要不可欠であることを示し、地域社会と教員養成校との関わりに着目した教育実践モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、初年度にハンブルク州での視察調査において収集した研究資料の整理、分析を行った。また、これまでに収集した研究資料に加えて、国内外の多文化共生を目指した音楽活動の事例調査を行い、多文化共生教育に関する議論の国際的動向を把握することで音楽を通じた多文化共生教育の理論的枠組みを構築することができた。また、ハンブルク州の器楽教育プロジェクトについては、昨年度の視察によりコンタクトをとった音楽講師を対象に、当該プロジェクトの現状やコロナ禍における器楽学習について、オンラインインタビューを行うなどして、引き続き調査を進めることができた。 我が国における多文化共生教育の現状について、滋賀県内を中心に行政職員や学校教員、ボランティア関係者へのインタビュー調査から多様な文化背景持つ子どもたちの音楽文化への関わりの課題を明らかにすることができた。そして、日独の教育制度や音楽科カリキュラムの国際比較を通して、学校教育と地域社会との関わりに着目し、我が国における多文化共生を目指した音楽活動の現状と課題をまとめることで教員養成校の目指すべき教育実践モデルを提案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2021年度は、多文化共生を目指したハンブルク州の器楽教育プロジェクトの現地調査で得た知見と、これまでに収集した資料をもとに、研究成果をまとめて研究発表を行う。2021年度に予定している現地視察は、新型コロナウイルスの影響で実施が困難な場合は、当該プロジェクトに関わる音楽講師を対象にオンラインにてインタビューや質問紙によるアンケート調査を行い、引き続き研究資料データを収集したい。 そして、多文化共生を目指す器楽教育の授業開発および指導法のあり方を提案するため、日独の音楽科カリキュラムの国際比較による検討をまとめ、滋賀県の学校現場および国際協会や長浜市民国際交流協会、ボランティア関係者など地域との連携を図りながら実践研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
ドイツ・ハンブルク州にて、基礎学校で実施されている器楽教育プロジェクトを視察する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期となったため次年度使用額が生じた。ドイツの器楽教育プロジェクトについては、オンラインインタビューや紙面アンケートにより調査を進めるため、次年度に通訳・翻訳の謝金として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)