2021 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国における教師の評価力に焦点を当てた数学科授業改善に関する研究
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19K14225
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
石井 洋 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50734034)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教師の評価力 / 授業改善 / 児童生徒の視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、大きく二つの方向性で研究を進めてきた。一つは国費教員研修留学生の数学教師との共同研究である。 フィリピン人留学生とは、算数指導における構造化された問題解決と練り上げアプローチについて、授業の参与観察や質問紙調査等を通して検討した。我が国の練り上げは構造化問題解決アプローチの重要な一部であり、学習目標の達成と児童の高次の数学スキルの発達に重要な役割を果たしていることを明らかにした。そのため、練り上げアプローチをフィリピンでも取り入れていくことで授業改善に活かしていくことができると結論づけた。 フィジー人留学生とは、我が国とフィジーの算数授業について、授業分析や質問紙調査を基に比較し、当該国の授業改善につなげる研究を行った。問題解決型のアプローチを導入することで、フィジーの児童の批判的思考力を高めていくことや、算数の知識を広げる教材教具を用意することで、子どもたちは探求的な学習が可能になること等を整理し、フィジーの授業改善に活かしていくことができると結論づけた。 二つ目は、児童生徒の視点を取り入れた授業改善の研究である。小中学校の児童生徒から算数・数学授業に対する意見を質問紙調査で把握し,学習者主体の授業改善の視点について考察した。児童生徒間の回答の比較から,これまで楽しかった授業の活動内容として「説明する」活動に大きな差が見られたことから,生徒は児童に比べて話し合い活動やグループ活動は好きであるが,自分の考えを「説明する」ことに対しては苦手意識をもっていることが明らかとなった。また,生徒の一定数は,「説明する」活動を望んでいるものの,どのようなことを説明・表現したらよいかわからないといった意見が多かったことから,より主体的になるアクティブ・ラーニングの授業改善として,説明・表現活動の工夫が挙げられることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生徒の学習状況を反省的に捉えることによる授業改善の枠組みを構築するために、学習評価に関する基礎的な研究として、ペーパーテストの可能性と限界について研究し、その後、生徒の学習状況を的確に捉えるためのパフォーマンス課題の作成に関わる課題を考察した。また、これまでの授業改善は教師が主体となっていたが、近年エージェンシーの概念が提起されてきていることから、児童・生徒の算数・数学授業に対する意見を質問紙調査で把握し,学習者主体の授業改善の可能性について考察した。そこでは、生徒が自分の学びを自分で決めるという学習に対する当事者意識をもつことを明らかにした。 開発途上国の授業改善を図るための研修プログラムについては、インドネシア人留学生とナミビア人留学生の研究の関心から算数科の文章題や授業展開に焦点を当てて、我が国の現状を実証的に捉えることで、その検証を行ったり、フィジー人留学生とブータン人留学生の研究の関心からICTの活用に焦点を当てて、我が国の現状と課題について明らかにし、自国の授業改善に活かしていくことができると結論づけた。 このように研究は何とか進めているものの、COVID-19の感染拡大により国内で調査をせざるを得ない状況下なので、当初予定していた研究内容の方向性からは若干ずれている点は否めないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、今後教師の評価力を向上させるための研修プログラムを開発途上国(ザンビア及びサモア)の調査校において実施する予定であった。しかしながら、COVID-19の感染拡大により渡航の自粛が求められ、国内で調査をせざるを得ない状況となっている。幸い、昨年は研究室にフィリピン人とブータン人、フィジー人数学教師が国費教員研修留学生として派遣されてきたので、彼らに調査協力を依頼し、本研究を継続してきた。今年度も海外渡航が制限されているが、可能な限り現地でのフィールドワークを計画したい。また、受託しているJICAの課題別研修がオンラインで再開されたので、それも研究の対象とすることで、本研究課題に迫りたいと考えている。最終的には授業改善の枠組みと評価力向上プログラムを関連付けながら、今後の開発途上国における授業改善の方向性について考察することを目指していく。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、今後教師の評価力を向上させるための研修プログラムを開発途上国(ザンビア及びサモア)の調査校において実施する予定であった。しかしながら、COVID-19の感染拡大により渡航の自粛が求められ、国内で調査をせざるを得ない状況となっている。そのため、旅費の支出が計画よりも大幅に減り、国内で実施可能な調査へと変更したことによる設備等の物品の購入が多くなっている。 今年度は、状況を見て渡航の計画を立てるが、渡航が難しい場合でもJICAの国内における課題別研修等を研究の対象とし、その調査費用等に使用することを考えている。
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