2019 Fiscal Year Research-status Report
文化財保存修復技術と倫理の教育 アプローチ確立への研究
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19K14266
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
長峯 朱里 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 研究員 (70759042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化財保存 / 文化財保存教育 / 専門教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は文化財修復教育への新しいアプローチ方法を検討することが目的である。本研究では、①文化財修復技術と理論間・教育への問題提示を行う。ICOMの1984年に出された修復倫理規定には、“修復者の訓練と教育の項目において、訓練と精密な研究を使用し結果を批判的に解釈する体系的アプローチに従って、保存問題を解決する能力を育成するために作業技術と感覚の開発、材料と技法に関する倫理的知識の獲得、科学的方法論の厳格な基礎を含むべきである”と記している。ICOMが掲げた修復倫理規定から、1.芸術と文明の歴史、2.研究と文書化の方法、3.技術・材料の知識、4.保存理念と倫理、5.保存修復の歴史と技術、6.科学・生物学、劣化過程の物理学、保存法の物理学を文化財保存修復教育の必要6項目として挙げ、国内・国外の教育施設を調査し・国内外比較からより明確な問題の提示を行う。②日本の修復技術を継承しつつ、倫理や科学的方法論を合わせた現代的理論を構築する 比較調査から得た問題点をベースに、日本の修復技術と倫理を補完する理論を構築する。構築時には、本大学の保存修復教育者・他教育施設研究者・教育学研究者と連携し、文化財修復教育及び修復技術に導入しやすく、他分野に応用可能な文化財修復理論を論議する。③保存修復技術教育と倫理教育へのアプローチへの確立、④実践的な教育の中で評価を行い、文化財保存修復教育の基礎的研究とする。 本年度では①文化財修復技術と理論間・教育への問題提示のために複数の国内教育機関、海外教育機関の調査と比較を行い、従来の教育体系の精査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究では、国内・国外の教育施設を調査し・国内外比較からより明確な問題の提示を行うことを目的とし、調査を行ってきた。授業やオリエンテーションを含めた教育を分類、比較した。国内、国外の調査対象としたイギリスの教育機関では問題無かったが、フランスでは調査時に対象校がストにより閉鎖、その後感染病による混乱で再調査することが出来ない状況である。また、国外との教育方針を比較するにあたり、上記の6項目より基礎となる教育方針が異なっている部分も多く、比較方法を再検討する必要があるため、当初よりやや進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、引き続き国内教育施設の調査及び国際調査の実施を行い、そこから修復技術と倫理や科学方法論を合わせた現代的理論の構築を目標とする。現段階で、教育の素地の違いから比較の再見直しを行い、複数の教育施設の実態調査から得た問題点をベースに、日本の修復技術と倫理を補完する理論を構築する。構築時には、本大学の保存修復教育者・他教育施設研究者・教育学研究者と連携し、文化財修復教育及び修復技術に導入しやすく、他分野に応用可能な文化財修復理論を論議する。加えて、現存の教育と構築した理論を合わせた教育プログラムの構造枠組みを検討し、大学教育へ組み込む場合の現実的な意見を踏まえて教育に繋げるアプローチを確立する。
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Causes of Carryover |
前年度は調査予定であった教育機関がストで閉鎖してしまったこと、また感染症の影響で再度調査をするための予定が立たないことなどで研究が滞った。本年度では引き続き国内・国外合わせて調査を行うための旅費と研究発表に使用する経費に充てる。
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Research Products
(1 results)