2022 Fiscal Year Annual Research Report
文化財保存修復技術と倫理の教育 アプローチ確立への研究
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19K14266
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
長峯 朱里 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 研究員 (70759042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保存修復 / 保存修復教育 / 大学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、文化財修復教育への新しいアプローチ方法を開発するが目的である。この研究では、文化財修復教育の理論と実践へのギャップを縮める授業を研究するために、まず日本の大学の授業項目をICOMの倫理規定6項目として分類し、現況の授業体系をまとめた。 文化財保存修復の大学教育システムは、国によって異なっている。そのため、保存科学分野に強いアメリカや文化的背景の強いイギリス・ドイツ・オーストリアを主な例に海外の大学教育のプログラムや実践への取り組みを比較検討した。どの国でも理論と実技の両面を重視した教育が行われているが、日本での教育と比較すると芸術と文明の歴史、保存修復の歴史と技術の項目に分類される授業が諸外国より平均以下であるという点が考察された。加えて、実践の面では現在の芸術業界のニーズに対応していないこと、技術的研鑽を積む試料や場が少なく実践的なスキルを身につけることができないこと、授業が閉鎖的で、他分野の学問や他大学との交流が少ない点が挙げられた。 以上の問題点に注視し、日本の修復技術と倫理を継承しつつ、教育に有用な理論を考察した。文化財の歴史と社会的背景を重視したアプローチは、文化財の修復に歴史学、人類学、社会学などの学問を活用する。このアプローチでは、文化財は単なる物体ではなく、それらを所有し、使用してきた人々の生活や文化の証であると捉える。そのため、文化財の修復を行う際には、それらを歴史的・社会的文脈の中で理解し、修復後の文化財が継承され、活用されるための方策を講じることが重要となる理論を学ばせていく。 日本の文化財保存修復技術は世界的に高い評価を得ており、多くの優れた修復技術が開発されているが日本の文化財保存修復は、より修復の歴史について論じていく。これらの理論は、日本の修復技術と倫理を補完し、より質の高い修復を行うための基盤となりえると考える。
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