2020 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental study of the reasoning in children with Learning Disability
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19K14280
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
蔦森 英史 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60708478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 推論 / 類推 / 類似性 / 限局性学習症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は限局性学習症の定義内にもある推論機能が学習面に及ぼす影響を検討することを目的としている。研究代表者が介入した学習困難事例は、数学文章題の介入を行なっても、基本問題への介入指導に基づく知識が類題で正しく適用されないという様子が観察された。これは過去の経験(ベース)と現状の課題(ターゲット)との間の類似性を抽出し、知識を適用(写像)し問題解決に当たることに関するエラーではないかと仮説立てられた。具体的には、類似性抽出の段階で基本問題から見かけの類似性(属性類似)のみに着目し、具体的な問題の構造や数字との対応関係(関係類似性)に着目できなかったと考えられた。 2019年度は大学生を対象に検討を行なった。類似性抽出課題はWAIS-Ⅳの「類似」課題を用い、類推課題は太田・山崎(1996)の課題を実施した。WAIS-Ⅳ「類似」の平均値26.09(範囲20-33)であり、類推課題は平均1.68(範囲0-4)であった。相関分析の結果r=.058(p=.75)と有意な相関は認められなかった。 2020年度は当初計画において、小学生を対象とした実験を予定していたが、大学生を対象とした研究で類似性傾向と類推課題との間に十分な関係性を見出せなかったため、課題の再検討を行なった。類推課題は最大値4と天井効果が出やすいため、新たな課題を検討することが必要であると考えられた。また類似性以外にも類推課題に影響する要因を検討するためWAIS-Ⅳにおける「推理」課題得点と類推課題の相関分析を行なった。WAIS-Ⅳ「推理」は非言語的な推理力を検討する課題である。その結果r=-.42(p=.013)と有意な相関が示された。 2020年度は小学生のみならず大学生に対しても対面で実験することが難しい状況が続いた。2021年度は改変した類推課題を大学生に実施したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度の大学生を対象とした実験において、類推と類似性抽出傾向の関係性を十分見出せなかった。課題の再検討を実施するとともに、類推に影響するその他の要因についても再度検討を行う必要があった。2020年度は2019年度のデータを再分析するとともに、本来は新たな課題を大学生に再度実施する予定であった。新型コロナウィルスの影響で、対面で実験を実施することが難しい状況が続き、実験をすることが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年では天井効果が出にくい新たな類推課題を用いて実験を行う。また2020年の再分析の結果、類推課題には当初仮定していた類似性傾向よりも非言語的な推理力と関係する可能性も示された。類推に及ぼす諸要因を網羅的に検討を行う。おそらく2021年は大学生に対する再実験で終了すると思われる。そのため、できれば本研究を1年延長し、大学生の同様の課題を小学生に用いて、類推に及ぼす要因に関して新たな知見を示したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本来予定していた学会への参加がOnlineとなったため旅費が大幅に軽減した。次年度は実験を再度実施することが必要なため、実験や分析に要する人件費にこれらの費用を用いた。さらに新たな課題を実施する必要から心理検査道具もしくは実験に必要な備品を追加で購入する可能性も検討している。
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