2020 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム症者の特別活動を要としたライフキャリア指導プログラムの開発
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19K14286
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
大谷 博俊 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (60420551)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / ライフ・キャリア / 能力・態度 / 実践研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は自閉症者の“余暇や暮らし”、そして“働く”ことへの自己認識(ライフ・キャリア)を詳細に捉えることを目指してきた。また、教職大学院の授業科目を中心として、小学校、中学校および特別支援学校おけるフィールドワークを駆使することで、特別支援教育におけるキャリア発達支援の実践を省察し、本研究目的の追求に努めてきた。 前者については、企業等で就労する20~50代の自閉スペクトラム症者を対象とした調査研究によって、そのライフキャリアに関する能力・態度には、「仕事」「生活」「趣味」をはじめ、「自助努力」「他者への相談」「自己判断を慎む」など多くのテーマが含まれることを明らかにした。これらの結果は、研究論文「成人期自閉スペクトラム症者のライフキャリア―働く20・30・40・50代の事例からの示唆―」としてまとめ、発表した(10.研究発表〔雑誌論文〕参照)。後者については、専門職学位課程の大学院生との共同研究によって、ライフキャリアの能力・態度に係る内容や指導方法のヒントにつながる、次のような成果を得ることができた。 1)児童のライフキャリア発達支援のための「個人評価表」を開発した。 2)小学校の“特別活動”、中学校の“総合的な学習の時間”、及び肢体不自由特別支援学校の“産業社会と人間”に対して、ライフキャリアの観点から分析を行い、“児童生徒同士の共同”、“教員と生徒との対話”が重要であることを確認した。 1)については、研究論文「ウィズコロナ時代における特別支援教育実践を問う―2020年度におけるA県小学校・中学校の事例を通して―」としてまとめ、発表した(10.研究発表〔雑誌論文〕参照)。また、2)については、研究論文「現職教員の特別支援教育に関する教職実践力を高める―教職大学院における「キャリア教育・進路指導」の授業を通して―」としてまとめ、発表した(10.研究発表〔雑誌論文〕参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度の計画は、特別活動を要とした児童期から成人期までの自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムの開発であった。自閉症スペクトラム症者の生活実態調査の結果を加味し、教職大学院の授業科目である「特別支援教育おけるキャリア教育・進路指導」及び「フィールドワーク」を中心に、院生による、小学校、中学校および特別支援学校おける実践研究を想定していたが、全国的な長期に渡る学校の臨時休業により、実践の内容・実施計画等を大幅に変更せざるを得なくなった。 また、大学での授業開始も大幅に遅れ、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる院生とのディスカッションなどにも支障が大きかった。そして、このような状況の中、先のプログラムに関わる実践研究のための、院生との協議機会(授業)を手探りで構築してきたため、効率は非常に悪いものとなった。 そのため、これら指導プログラム等の実践に対する専門家からの意見聴取や評価についても、当初の計画通り進んでいない。実践研究の適切な変更に時間を要し、さらに令和2年度に計画していた学会での関連シンポジウム開催、あるいは研究会の実施などが、新型コロナウイルス感染症のため、学会運営が大幅に変更され、また県外への往来が制限されるなど勤務条件の変更もあり、それらに充分対応ができなかったことにより、現段階では十分な検証に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、まず、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる実践成果について、さらに検証を進める。オンラインによる学外の研究者や学校現場の教員等と意見交換する方法に習熟しつつあるため、研究方法を変更しつつ、取り組みたい。また、先の通信手段を使用することで、次年度は、学会等での発表機会を設定していきたい。 次に、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる実践研究についても、さらに進める必要がある。新型コロナウイルス感染症対策は、未だ不確定な部分が多く、学校現場でもその対応が続くことが予想される。そのため、次年度の実践研究では、全ての校種に係る検討が困難な場合は、大学院生との共同研究の時間として想定しているゼミナールに所属する現職受講者の置席校種を重点的に取りあげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
自閉症スペクトラム症者の生活実態調査の結果を加味し、教職大学院の授業科目である「フィールドワーク」等を中心に、院生による、小学校、中学校等における実践研究を想定していたが、全国的な長期に渡る学校の臨時休業により、実践の内容・実施計画等を大幅に変更せざるを得なくなった。 それに伴い、実践研究の適切な変更に時間を要し、さらに、実践成果を精査する、そして助言を得る等のための、学会等発表や研究会等の中止や運営変更への対応が充分できなかったこともあり、旅費、データ解析等予や算専門家からの助言に対する謝金の必要額が減じた。 令和3年度は、令和2年度までゼミナールに所属していた院生(修了生)が勤務する学校、そして令和3年度現在所属している院生の派遣元の学校に焦点化し、実践研究を行いつつ、それらについて、オンラインで協議できる環境を整備することから、授業実践等の記録用機器、データ解析や通信環境整備等費用支出を予定している。さらに、既にオンラインで開催することが決まっている学会等での発表、シンポジウムなども計画するため、学会参加・発表の費用、及びライフキャリアの能力・態度に係る複数の専門家への謝金等の支出を予定している。
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Research Products
(3 results)