2019 Fiscal Year Research-status Report
読み書き困難児の漢字処理における眼球運動の分析と漢字の指導法に関する実践的研究
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19K14299
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
中島 栄美子 香川大学, 教育学部, 准教授 (70533884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 読み書きの困難 / 眼球運動測定 / 漢字 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,読み書きに困難がある子どもの漢字認知の特徴を眼球運動計測により明らかにし,有効な指導方法を検討することを目的とした。令和元年度については,本学大学院に設置されている特別支援教室に来談し,漢字の習得に困難のある小学校2年生から5年生までの児童8名を対象に,漢字認知の際の眼球運動を注視点追跡装置(Tobii Technology社製T120アイトラッカー)を用いて計測した。検査の内容は,画面に呈示された実在しない漢字(以下,偽漢字とする)を覚えて,用紙に書き写す課題であった。偽漢字は7文字であり,それぞれ小学校1,2年生で学習する漢字の構成要素を組み合わせて作成した。偽漢字は画面中央に15秒間提示され,画面上から消去された後,対象児は記憶した偽漢字を回答用紙に再生した。 正しく写字ができた数の平均値は7問中4.9問(SD=2.0)であった。1文字に対する平均注視回数は28.4回であった。漢字認知の際の注視の特徴を分析するため,それぞれの文字を覆う正方形の領域を縦8×横6のセルに分割し,漢字呈示中の各セルにおける総注視時間を算出した。7文字とも,総注視時間の最高値は文字の中央部分に存在した。また,上下×左右の4分割にし,各領域における平均総注視時間を算出した結果,下部よりも上部を長く注視している傾向が認められた。一方で,上部,下部ともに左右の領域の平均総注視時間に顕著な差は認められなかった。関口他(2011)は,漢字写字課題の注視パタンについて読み書き困難児群と健常児群で群間比較を行い,読み書き困難児群は左上の領域を長く見ることを明らかにした。本研究では先行研究と異なる結果が得られたため,今後はデータ数を増やす等の詳細な検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度は,基礎研究として,小学生を対象に漢字写字課題遂行中の眼球運動計測を行い,その結果を分析することで,漢字認知の特徴を明らかにする計画であった。当初は対象児を読み書きに困難がある群とない群に分けた群間比較を行うことを予定していたが,健常児群のサンプルを得ることができず,読み書きに困難がある子どものデータのみ分析の対象とした。また,読み書き困難児の漢字認知の特徴を検討するにあたり,本年度に実施したデータのみでは検討が不十分であった。よって,今後基礎研究を発展させ,継続してデータの収集と分析を行う必要があると考える。 以上のような理由により,研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,健常児のサンプルを得ることができなかった場合は,読み書きに困難がある子どものサンプル数を増やしたうえで,眼球運動計測によるデータ収集を継続的に行う。その場合,新たな指標を加える,あるいは刺激材料を変更する等の検討を行い,より詳細な分析を実施することで,読み書き困難児の漢字認知に関する知見を明らかにしたい。 なお,基礎研究の対象となった児童のうち,漢字書字に困難のある児童を抽出して個別指導を実施する計画であるが,児童および保護者の了解を得ること,指導回数を確保すること等に困難が生じる可能性がある。その場合,個別指導は次年度に持ち越すことも視野に入れ,まずは基礎データの分析を詳細に行い,漢字習得に困難を有する子どもに対する有効な指導方法を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
注視点追跡装置サポート延長料を計上していたが,データ収集中の更新はデータ損失等の危険性があるため,本年度の更新は見送った。次年度実施する計画である。
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