2021 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害者の芸術鑑賞における触覚を介した形態認識と情緒に関する研究
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19K14310
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
守屋 誠太郎 筑波技術大学, 産業技術学部, 講師 (90809310)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 触察 / 芸術鑑賞 / 視覚障害 / ユニバーサルデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究計画では、2019年度の第一次調査(アンケート)からさらに発展的な調査としての第二次調査(鑑賞実験)を実施することであった。当初、2020年度中に実施する予定であったが、新型コロナウイルスの影響を受け、二度の延期を経て2022年3月に実施された。年度末にようやく実施することができたが、新型コロナウイルスの流行が治まらない中での調査であることから、調査規模については研究対象者の人数や実施時間など当初の研究計画から大幅に縮小せざる負えなかった。 本実験調査の目的は、視覚障害者が展示施設での彫刻などの立体作品を鑑賞する際に、作品の大きさや素材がどう影響するかや音声ガイドや点訳資料などの作品解説資料の効果などについて調査することを目的とした調査である。方法については、鑑賞触察用の立体作品をカテゴリー別に用意し、それぞれの触察鑑賞による評価について、ヒアリング調査したものである。作品のカテゴリーとしては同形状でサイズを4段階に分けたものを2種類、同形状・同サイズで素材を3種類に分けたもの、同テーマで形状が異なる4種類のものを用意し、形のわかりやすさや、味わいとしての好みなどを評価することに加えて、鑑賞中に音声ガイド・点訳資料による作品解説を行いそれらの評価について調査した。調査結果について2022年度内に分析とまとめを行い、学会や論文による発表をもって研究成果をまとめていきたい。 また、触察鑑賞に関連する活動として、国立民族学博物館特別展「ユニバーサル・ミュージアム さわる!”触”の大博覧会」に触察可能な彫刻作品の出品、東京都歴史文化財団主催の講演会に登壇発表などがある。2021年度の発行文書については、上記民博の展示書籍への分担執筆、東京都歴史文化財団の報告書への寄稿、視覚障害リハビリテーション協会抄録集への寄稿、所属大学における研究紀要の投稿などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来は、本研究事業の最終年度だったのだが、新型コロナウイルスの影響に伴う研究計画の遅れから、2022年度まで延長した。研究計画上のタスクとして、第一次調査(アンケート)を2019年度に行い、その結果をもとに第二次調査(鑑賞実験)のための準備を行った。その流れの中で2020年度に新型コロナウイルスの発生があり、第二次調査については調査協力機関と協議・検討を継続し、二度の延期を経て2021年度末に実施するに至った。このことからこの2つのタスクについて約1年遅れたことから、研究成果のまとめについては研究事業を延長せざる負えない事態となったのである。 しかしながら、コロナ禍にあって接触行為を伴う研究内容であるため、完全に不可能で終了する可能性があったことを考えると、中断せずに研究を進展できたことはありがたい限りである。 また、概要で記した通り、調査が停滞している期間の関連する研究活動によって、触察鑑賞に関する研究者や鑑賞者、展示施設関係者などからの意見や勉強会に参加することができ、第二次調査の準備に際しての参考とすることができた。 研究成果についてはこれより、調査結果の分析と考察についてまとめていき、それをもとに今後のさらなる進展を目指すべく施策してしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究事業では、研究計画の遅延や調査の規模縮小を要する事態になるなど、新型コロナウイルスによる影響が非常に大きなダメージとなった。本研究のその先にある目標に、触察展示の環境整備の提案に向けてのエビデンスを明らかにすることがあるが、そのためには、さらに本研究課題の継続と進展が必要であると考えている。 現在、新型コロナウイルスが未だ収束されない状況であるため、手の接触を要する本研究課題の継続についても難しい状況であると考える。本年度の研究成果をもとに、ウィズコロナの世界線での本研究課題のあり方について考えていく必要があるだろう。そのためにどのような調査方法や検証が必要になるのかという研究アプローチについて、同分野の研究者や関係者との意見交換を行い、今後の研究の推進を図りたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で研究事業が約1年遅れたため、それに伴う予算の消費計画も同様に遅れている。予算については、学会発表に伴う旅費や大会参加費、論文掲載に必要な経費、資料作成に必要な経費など、研究成果のまとめに必要な経費として使用する予定である。
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