2019 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における便益遅延性と学習経験を考慮した講義品質改善のための評価手法の開発
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19K14315
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川本 弥希 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 研究員 (80832427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 便益遅延 / 学習経験 / 高等教育 / 定性分析 / 看護教育 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画では、第一回目の調査を大学生に対して実施し、収集した定性データから学習経験と便益感の関係を整理することが目標であった。 まず、1つ目の成果として、講義の最終日に学生150名から学習経験の獲得に関する意見を収集してテキスト分析をおこない、学習経験の変化に影響を与える要因について整理した。その結果、学習経験の向上、低下、停滞に影響を与える要因を抽出できた。この成果より、今後の学習経験の定量尺度の作成のための指針となる知見が得られた。この成果は2020年度に教育工学系の論文誌への掲載が決まっている。 次に、別の研究成果として、多変量解析により学習経験と便益感の関係を把握した。講義の最終日に学生170名から学習経験と便益感の定量データを収集して分析した。その結果、学習経験は講義の品質、満足感、ロイヤルティに直接的、および間接的な関係があることが分かった。この成果は、2020年3月に教育工学系の国際学会にて口頭発表している。 また、別の調査として、学習経験を定量的に調査するための尺度作成のための試行調査を行った。このデータは上述の2つ目の研究成果で使用したデータを利用して分析を行った。その結果、学習経験レベルと質問項目において相関がみられた。いくつかの問題点を整理し次の調査のための改善点を洗い出した。また、この調査結果は2020年2月に教育工学系の国内学会にて口頭発表している。 最後に、看護学実習を受講した大学生90名を対象に定性調査を実施し、看護学実習が学習経験の獲得に影響を与える要因を抽出した。その結果では、上述の1つ目の研究成果とは異なる要因が学習経験の変化に影響を与えていることが分かった。よって、学習経験の獲得に影響を与える要因は、クラス学習と現場実習によって違いがあることが示唆された。この成果は2019年に教育工学系の学会にて、ポスター発表、口頭発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の調査目標であった大学生からのクラス講義に関する定性データは取得することができた。また、取得したデータの一部を分析し、国内、国外の学会において発表を行った。また、原著論文を投稿し、採択された。以上より、初年度の計画においては順調にプロジェクトは進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の4月以降に、大学生の教育実習における学習経験、遅延便益について調査する予定であったが、コロナウィルスの影響で学校が休校となり、教育実習が実施されていない状況である。そのために調査の予定が立たないという問題がある。今後は状況は見ながら対応していく予定であるが、このまま取得できない可能性もある。一つの対策案として、昨年度に教育実習を受講した修士の学生に対してインタビュー調査を行うことを考えている。 また、本年度の前期授業で定量調査を行う予定であったが、授業がすべてオンライン授業になってしまい、昨年度のデータの学習経験や便益感と単純に比較することができないと考えられる。調査は来年度に延期することを考えている。 当面はすでに取得したデータの分析をさらに進めて、外部で発表するための準備を継続する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたモニターの購入と分析ソフトウェアの購入を直近で使用する予定がなかったので見送った。ソフトウェアは本年度に購入予定であるがモニターに関しては既存のものを使用しており購入予定はない。ただし、異動によりモニターが必用になった場合は購入する。 謝金に関しては、昨年度に200名の調査を行ったときに500円分の謝金を払う予定であった。しかし、倫理審査の申請内容に謝金を支払わないこと(インタビュー調査は支払う)となっていたので、大学側で支払わないと判断されたため拠出しなかった。 昨年度に採録が決定した論文の掲載費用は本年度の支払いとなった。今後は英語論文の投稿を考えているので、校正費用などが発生するため繰り越し予算を使用予定である。
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Research Products
(6 results)