2019 Fiscal Year Research-status Report
障がい対応を多様な背景を持つ全ての学生への学修支援へと発展させるシステムの開発
Project/Area Number |
19K14325
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
西牧 可織 北海道医療大学, 心理科学部, 助教 (70758549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クラウド / 協働学修 / 発話テキスト / プログラミング教育 / データサイエンス / ダイバーシティ教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である「障がい対応を多様な背景を持つ全ての学生を対象とした学修支援へと発展させる」ために,2019年度は,まず,演習講義および体験学習の学生による報告発表会において、発話・テキスト変換システムを用いて教員の講義ならびに学生の発表について発話データを取得した。発話データ取得において,男女差が認められないこと、講義教室や機材の設置場所に影響されること,聴講者が聞き取りやすく理解しやすい発話手法が適当であるなど,発話・テキスト変換システムを一般的な講義室において安定的に運用するに当たって重要な基礎的知見を得ることができた。これは、学習支援教材への応用のみならず、教員の教育方法改善の一助にもなると思われる. 実施計画より「ダイバーシティ教育の観点からの研究へも対応できるような機材も試験的に導入し,学修支援システムの拡張を行う」ために大学組織として整備されたクラウド環境を活用し,発話・テキスト変換システムと合わせ,大教室で行われる授業において,グループワークに不慣れな学生や留学生も積極的に討議に参加できるような仕組みづくりを行った.クラウド内に電子ボードを設置して,発話テキスト変換システムも用いながら,受講する全ての学生が同時に意見を書き込み・互いに閲覧し課題の討議ができるようにした.さらに,教育効果の向上を図るために,クラウドを活用して,学生が互いに実験者や被験者となる同僚間アンケート調査を取り入れて,学生自身が質問紙を設計し、さらに、アンケート結果の分析を電子ボード上で行い,討議の活性化を図った。この結果、他の人の意見を見ながら、かつ、自分の意見も出しやすいなどの回答が学生から多く寄せられた.また、アンケート調査と他の調査方法を組み合わせた多面的な分析ができるようになり,質問を適切に設定する調査能力も向上するなど課題解決能力が高まったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障がい対応として導入した発話・テキスト変換システムを,演習講義の発表会という多様な学生が発言する場において,実際に学生発表の発話データを取得している.そして,発話における変換傾向を分析し,講義室などの環境を考慮することや正しく変換されやすい発話の工夫を示すまでに至っている. また,同時にクラウドアプリケーションを活用することによって,学生が互いに実験者や被験者となる同僚間アンケート調査を取り入れて,学生自身が質問紙を設計し、他の学生の質問に回答するようにした.さらに、リアルタイムに文字や画像などでコミュニケーションが取ることができる電子ボード上でアンケート結果の分析を行うことで,討議の活性化を図ることができた.学生からは,他の人の意見を見ながら、かつ、自分の意見も出しやすいなどの回答が多く寄せられたことによって,グループワークに不慣れな学生,対面での発言を躊躇しがちな学生など多様な学生に対しての学修支援体制が構築できたと思われる.また,学びの深度の観点からは,アンケート調査と他の調査方法を組み合わせた多面的な分析ができるようになり,質問を適切に設定する調査能力も向上するなど課題解決能力が高まったと考えられる. さらに,一部の講義内において,急遽,日本語に不慣れな留学生対応として,発話・テキスト変換システムを活用して教員の発話テキスト(日本語)を取得し,英語に翻訳した結果をスクリーンに提示することができた. 2019年度計画における「複数講義における発話テキストの収集や分析」「発話テキスト変換システムも活用したグループ討議」さらに「留学生への対応」ができたことから、「おおむね順調に進展している」と評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も、引き続き発話テキスト変換システムおよびクラウドを活用した協働学修を実施する。2020年度は、100名を超える大規模クラスの授業において、これまでは個別対応が必要とされていた文章指導などの授業において、クラウドを活用した学生間の討議に加え、正答との一致率などクラス全体の学びを授業内で即時に紹介し課題作成に反映できるような工夫を行う。とくに、言語表現能力の必要性に気づかない学生・文章表現を苦手とする学生が近年多いことから、学生自身が他の学生の多様な表現に触れ、学び取ることで、多様な学生に対する学修支援につながると考えている。 2020年度研究を遂行する上での課題となるのが,新型コロナウィルス感染防止対策における授業形態の変化である。本学でも2020年度初頭よりオンライン形式での遠隔授業がスタートしており,今年度は学生間の対面でのコミュニケーションが困難な状況続くと予想される. 本研究では,発話・テキスト変換システム・クラウドアプリケーションを用いて,クラウド上の討議においてもこれまでのキーボード・タッチパネルでの入力に加え,学生が自宅等から音声で意見を述べても,討議がスムーズに実施できるような仕組みづくりを検討している. これらに加えて,ダイバーシティ教育の観点から,論理的思考力を養いながら個々の学生が多様な価値観で自由に学びを表現できる取り組みとして,ブラウザ上で実施可能なプログラミングやビジュアルプログラミングを授業に組み込む.学修支援の新しい形として,教員とともに授業のデザインから携わるようにすることで,学生どうしが学修支援そのものを学び考える機会を設けるようにする.プログラミングの知識はsociety5.0におけるデータサイエンス・AIに関する教育にも直結しており,データサイエンティストの人材育成の一助となることを目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染防止対策により,2019年度計画における「国内会議で発表するとともに教育分野やシステム分野など多方面の研究者との意見交換を行う。」が一部実施できなくなったこと,2019年度初頭に大学としてクラウドサービスの活用環境が学生対応も含め、ある程度整備されたことにより,次年度使用額が生じた. 2020年度は,各学会で遠隔授業への取り組みおよび遠隔授業における学修支援に関する会議が開催されると思われるため,これらへの参加費用に配分したい.また,今後の推進方策に記載した,コロナウィルス感染防止対策における「遠隔授業」での指導および多様な学生の学びに配慮した教材作成のため,動画編集用機材および動画配信に関わる機材を購入したい. さらに、学生が多様な価値観で学びを表現できるよう実施するプログラミング教育に関する教材としては,学びのアウトプットのために小型ロボット等の学修支援機材を整備する。学修支援機材はなるべく多くの学生が安定的に利用できるように、数万円程度の価格のものを複数台準備したいと考えている.
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Remarks |
本研究におけるクラウド活用をした協働学修の取組みが、私立大学情報教育協会「ICT利用による教育改善研究発表会」において表彰された。研究内容・受賞理由などが掲載されたWebページである。
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Research Products
(7 results)