2020 Fiscal Year Research-status Report
専門領域としての科学コミュニケーションの領域構築過程についての質的検討
Project/Area Number |
19K14343
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
工藤 充 大阪大学, COデザインセンター, 特任講師(常勤) (10775886)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 科学コミュニケーション / 科学技術コミュニケーション / サイエンスコミュニケーション / パブリックエンゲージメント / リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「科学コミュニケーション」と呼ばれる領域が、実践および学際的学術研究の融合した専門領域として体系化される過程について、主に質的な手法を用いた検証・考察を行うものである。 2020年度も、2019年度に引き続いて新型コロナウイルス感染拡大の影響により国内外でのフィールドワークを実施することができなかったため、科学コミュニケーションの「専門性」の学術的議論に関する文献・資料を網羅的に収集・レビューし、それらの体系的な整理を行うことに集中して研究を進めた。具体的には、日本において科学コミュニケーションが学術的・制度的に体系化されていく過程でしばしば言及される、科学技術と社会、科学コミュニケーションの間の関係性を特色付ける重要な概念を複数同定し、それらの概念について認識論的および存在論的な観点から検討を行った。また、英語を中心的な言語として行われている国際的な科学技術論(Science and Technology Studies)の研究領域における科学コミュニケーションに関する認識論的・存在論的な議論についてもレビューを行い、日本における議論との比較検討を行った。 これらの作業の結果、日本において科学コミュニケーションの制度的・学術的な体系化が2000年代以降に推進される過程においては、欧州・北米を中心とした海外の制度的事例やそれと関連した学識者の議論が、主に日本の「科学技術社会論」領域で著名な学識者らによって常に参照・紹介されてきていることが示された。その一方で、同時期の海外の科学技術論における科学コミュニケーションに関する認識論的・存在論的な議論については、日本での議論への紹介・導入が積極的には行われてきていないことが示唆された。 これらの成果の一部を、著書(分担執筆)において公刊した。加えて、別稿を2021年度中に査読付学術誌に投稿する予定で準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科学コミュニケーションの「専門性」の学術的議論に関する文献・資料の収集・レビュー、そしてそれらの体系的な整理については、当初の研究計画よりも一層踏み込んだ形で取り組みことができており、科学コミュニケーションという専門領域の体系化についての重要な知見を本研究の目的・計画に沿った形で得ることができている。しかし、2020年度の1年間にわたり、新型コロナウイルスの感染拡大およびそれへの対策の影響で国内外の移動が制限されていたため、対面インタビュー調査および関連イベントへの参加を中心としたフィールドワークの実施を見送ることとなった。また、翌2021年度も含めた残りの研究期間中に新型コロナウイルスの感染拡大が収束する見通しもなく、したがってフィールドワークを計画していた通りに実施できる時期の目処も立っていない。また、この1年間の状況に鑑みると、2021年度中にフィールドワークを実施する見通しを立てることは非常に困難であることが予想される。そのため、フィールドワークを通じたデータ収集および分析を主軸の1つとした研究から、文献・資料調査を主体とした研究に計画を修正する必要性が生じた。この研究計画の修正作業に伴い、関連した文献・資料の収集及び検討を新たに行う必要が生じたため、本研究の現在までの進捗には当初の計画と比べてやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに既に収集した文献・資料のレビューの成果を論文にまとめ、査読付学術誌に投稿する。また、関連した文献・資料の収集およびレビューをさらに進め、特に、国際的な科学技術論(Science and Technology Studies)の研究領域における科学コミュニケーションに関する認識論的・存在論的な議論と日本における議論との比較検討を重点的に行い、2020年度までの研究活動からの知見をより一層深化させることを目指す。さらに、科学コミュニケーションに関する国内外の学会・研究会のうち、オンライン形式のものに参加してこれまでの研究成果を報告すると同時に、最新の科学コミュニケーション実践および研究の動向についての知見を広げ、また、関係する科学コミュニケーション研究者や実践者らとの意見交換およびネットワーキングを積極的に行っていく予定である。また、これらの作業と並行して、新型コロナウイルス感染拡大の状況変化をみながら、可能な範囲でフィールワーク、特にインタビュー調査を実施したい。
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Causes of Carryover |
2019年度に引き続いて2020年度中も新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定していたインタビュー調査を中心とした国内外でのフィールドワークを実施することができず、次年度の実施の可否を検討することとなった。そのため、フィールドワークに係る旅費およびトランスクリプト作成費用を次年度に繰り越すこととなった。繰り越した助成金はフィールドワークに必要な費用に充てると同時に、計画より拡大して実施する見通しとなった文献・資料調査に必要な費用としても使用する予定である。
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Research Products
(4 results)