2020 Fiscal Year Research-status Report
向社会的意思決定を支える神経基盤に関する文化差の解明
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19K14353
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
山田 順子 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (20837124)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 向社会的意思決定 / social mindfulness / 共感 / 社会生態学的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度では、米国における向社会的意思決定の心理基盤の検討および日米での向社会的意思決定の神経基盤の解明を目的としたfMRI研究を予定していた。 米国における向社会的意思決定の心理基盤検討のため、オンライン調査プラットフォームQualtricsを用いて、social mindfulness (Van Doesum et al., 2013) 課題およびそれに関連すると予想される共感性 (Davis, 1983) や調和維持 (Hashimoto & Yamagishi, 2016) 等の質問紙の作成を行った。またこれに合わせ、日本人および在日米国人を対象に、向社会的意思決定の神経基盤の検討を行うため、fMRI内で行う social mindfulness 課題の作成を行った。 米国におけるオンライン調査に関しては、米国在住の共同研究者によるチェックを経て、日英の翻訳内容に問題がないことや、Van Doesum et al. (2013) の課題と本研究で用いる課題が相違ないことを確認した。また、fMRIでの脳機能計測に用いる意思決定課題についても、デバックを行い動作に問題がないことを確認した。以上を踏まえ令和3年度の前半では、オンライン調査サイト (Pacific) を用いて、米国における向社会的意思決定の心理基盤の検証を行い、令和元年度に収集した日本データとの比較検討を行う予定である。またfMRIを用いた脳画像および脳機能の撮像に関しては、COVID-19の流行を考慮し、まずは日本人を対象とした向社会的意思決定の神経基盤の検討に目標を変更する。その上で、COVID-19の流行状況等を考慮し、在日米国人を対象としたfMRIでの撮像を行うかを判断する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度では、米国における向社会的意思決定の心理基盤の検討および日米での向社会的意思決定の神経基盤の比較検討を予定していた。当初、米国での心理基盤の検討は米国在住の共同研究者のもと実施を計画していたが、米国におけるCOVID-19の感染拡大により共同研究者のもとでの実施が困難になったため、計画を延期することとなった。 また日本人と在日米国人を対象としたfMRIを用いた脳機能の計測については、当初東京都近郊に住む日本人ならびに在日米国人を募集を予定していた。しかしながら、日本におけるCOVID-19の感染拡大および東京都における緊急事態宣言の発令により、fMRIを用いた対面での実験実施が困難となった。当初は令和2年度内での日本人を対象としたfMRI実験を予定していたが、その後緊急事態宣言が複数回発令されたことで、令和3年度に計画を延期することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の前半には、まず米国における向社会的意思決定の心理基盤を明らかにするため、オンライン調査募集サイト (Prolifit) を用いて、米国人を対象にオンライン調査を実施する。得られたデータを、令和元年度に測定した日本人の心理指標と比較することで、主観報告レベルにおける向社会的意思決定の心理基盤に社会差が見られるかどうかを検討する。 年度の後半では、当初の予定を変更し、日本人を対象としたfMRIによる脳機能の計測を行うことを目標とする。日本人における向社会的意思決定中の脳活動を計測し、欧米人を対象とした先行研究 (Lemmers-Jansen, 2018; 2019) で活動が計測された脳領域の座標をROIにして日本人の脳活動データを分析することで、向社会的意思決定と関連する脳領域が社会を通じて共通しているのか、あるいは社会差があるのかを検討する。日本人を対象としたfMRIでの脳活動計測を終えた上で、国内のCOVID-19の状況を鑑みて、在日米国人における対面実験が安全に実施可能であると判断された場合は米国人を対象としたfMRIを用いた脳活動の計測を行い、日本データとの比較を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度の計画では、米国における向社会的意思決定の心理基盤に関する調査 (約250,000円)、日本人および在日米国人を対象とした向社会的意思決定の神経基盤に関するfMRIを用いた脳機能計測 (約400,000円) の実施を予定していた。また、調査および計測で得られたデータに基づく学会発表 (約150,000円) および国際誌への論文投稿 (約200,000円) を計画していた。しかし、日米におけるCOVID-19の感染拡大に伴い、共同研究者による米国での調査が困難になるほか、日本における緊急事態宣言の発令によりfMRIの撮像を含む対面実験が困難になった。また、学会に関しても令和2年度に参加予定であった国際学会が次年度に延期されることとなった。このため、共同研究者と相談の上、米国での調査およびfMRIでの脳機能計測について、計画の延長申請を行い次年度に予定を繰り下げることとした。
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