2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14354
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
櫻井 良祐 北海道教育大学, IRセンター, 講師 (20802961)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 意志力 / 自己制御 / 暗黙理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は次の2つである。第一に、意志力の暗黙理論(自己制御能力が有限であるか、あるいは、無限であるかについての人々の素朴な信念)の個人差の規定因を明らかにすること、第二に、意志力の暗黙理論の個人差と種々の社会的帰結との関連について明らかにすることである。これまでの横断調査で得られた知見に基づき、本年度は、変数間の因果関係をより正確に検証するため、過去の調査回答者に対して追跡調査を実施し、縦断的な分析をおこなった。調査対象者は、大学卒業時(T1)と、卒業後数年経過した時点(T2)で調査に回答した。過去の調査において、自己制御を日常的に強く発揮していると認知するほど、有限理論を強く支持することが繰り返し確認されている。労働者は学生と比べて自己制御発揮の頻度・強度が多い傾向にあることから、大学卒業後に就職した人たちは有限理論を強く支持するようになると予測される。分析の結果、有限理論の程度は、T1と比べてT2においてより強いことが確認され、予測は支持された。本研究ではさらに、大学卒業時の意志力の暗黙理論の個人差と、就職後の主観的業績との関連について縦断的な分析をおこなった。先行研究において、意志力の暗黙理論と社会的達成との関連は、自己制御の負荷の大小によって調整されることが確認されている。そこで、労働時間を調整変数として、意志力の暗黙理論と主観的業績との関連を検証したところ、有意な交互作用が確認された。具体的には、労働時間が短い場合、有限理論が強いほど主観的業績が高い一方で、労働時間が長い場合にはこのような関連はみられないことがわかった。これらの関連は特性的な自己制御能力にはみられず、また、主観的SES等の変数を統制した上でも確認された。この結果は、実際の意志力だけではなく、意志力に対する信念を研究することの重要性を示す点で、意義のある知見だと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は追跡調査を実施することで、本研究の主たる問いである意志力の暗黙理論の規定因や、意志力の暗黙理論と社会的帰結との関連について、より内的妥当性の高い知見を得ることに成功した。他方、令和2年度にCOVID-19感染拡大の影響を鑑みて研究を中断したことで、1年分の遅れが生じている。したがって、総合的に見て現在までの本研究の進捗状況はやや遅れていると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き調査を実施することで知見の頑健性や一般化可能性を確認するとともに、実験によって変数間の因果関係や影響メカニズムをより精緻に検証する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は次の2つである。第一に、COVID-19感染拡大を受け、令和2年度に研究を中断したこと、第二に、令和2年度に続き、本年度も国内外の学会への現地参加を見送ったことである。これらの理由による使用額の増分は、補助事業期間の延長や、オンライン調査・実験の質・量の向上、研究関連書籍の追加購入等によって対応する予定である。
|
Research Products
(3 results)