2019 Fiscal Year Research-status Report
身体拡張のダークサイド: ウェアラブルロボット装用者に対する非人間的認知の生起
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19K14377
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
宮崎 由樹 福山大学, 人間文化学部, 准教授 (70600873)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体拡張 / ウェアラブルデバイス / ロボット / 物体化 / 認知バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は計画に沿って2つの実験を実施した。 (a) 実験1: 参加者 (104名) は,同一人物が,ウェアラブルロボットを装用している画像 (ロボット装用条件) ・装用してない画像 (非装用条件) を見て,その人物の人間性を評価した。評価には人間性尺度の日本語版 (上出他, 2017) の20項目を用いた。因子分析を行った所,元の因子構造が支持されなかった。よって,Bonfferoni法で有意水準を調整した上で20項目ごとにt検定で条件間の比較をした。その結果,非装用条件にくらべて,ロボット装用条件では「攻撃的」「好奇心旺盛」の項目で評価が高かった。 (b) 実験2:参加者 (344名) は,同一人物が,グラス型のウェアラブルデバイスを装用している画像 (ARグラス装用条件)・装用していない画像 (非装用条件) を見て,実験1と同様に,その人物の人間性を評価した。実験1と同様に因子分析を行った所,元の因子構造が支持されなかったため,有意水準を調整した上でt検定で条件間の比較をした。その結果,非装用条件にくらべて,ARグラス装用条件では「友好さ」「寛大さ」「礼儀正しさ」「謙虚さ」が低く評価された。また,実験1と同様にARグラス装用条件の方が「攻撃的」「好奇心旺盛」の評価が高かった。 実験1と実験2の結果を総合すると,同一人物であっても,ウェアラブルロボット・デバイスを装用することで,好奇心旺盛さが高く評価されることが頑健に示された。また,攻撃性もウェアラブルロボット・デバイスを装用している場合の方が高く評価されることも頑健に示された。前者の結果が生じた理由として,ウェアラブルロボット・デバイスは,まだ一般に広く普及していない機器であるため,その新奇な機器を装用する人物は好奇心の高い人物であると評価された可能性がある。後者の結果は考察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した実験を2019年度に実施した。総じて,順調に研究が進展しているが,評価尺度を人間性尺度の日本語版 (上出他, 2017) から別のものへ変更して追試を実施することを検討している。2019年度に実施した2つの実験では,オリジナルの研究で報告されている因子構造が再現されなかったためである。有能さと温かさの評価軸を用いることなど,検討を重ねたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は実験室実験に取り組む予定であったが,新型コロナウイルス感染症の終息時期が読めないため,オンライン実験へ移行することを4月に決定した。オンライン実験を効率的に遂行するためのツールとしてInquisit WebやQualtricsを導入済みである。これらの環境を有効に活用し,計画に遅れが生じないように取り組みたい。
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Causes of Carryover |
若手研究における独立基盤形成支援(試行)に採択されたことで,本研究の追加経費を得た。その追加経費分で次年度使用額が生じた。独立基盤形成支援(試行)の計画書に挙げた申請物品を2020年度中に購入予定である。
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Research Products
(3 results)