2021 Fiscal Year Research-status Report
身体拡張のダークサイド: ウェアラブルロボット装用者に対する非人間的認知の生起
Project/Area Number |
19K14377
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
宮崎 由樹 福山大学, 人間文化学部, 准教授 (70600873)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 身体拡張 / ウェアラブルデバイス / ウェアラブルロボット / ロボット / 物体化 / 非人間化 / 認知バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
反復作業や重い荷物を運ぶ作業時の身体的な負荷の軽減や事故防止を目的として,パワーアシストスーツの導入が進んでいる。その導入は,筋・骨格系の障害リスクの低減につながることも示されており(de Looze et al., 2016),今後ますますさまざまな企業・文脈での導入が増大する可能性がある。 将来的にパワーアシストスーツの導入が進むことで,副作用が生起する可能性も考えられる。具体的には,ロボット・機械は人間とは異なり,喜びや痛みを感じない非人間的な対象と認識される(Gray et al., 2007)。装用品の印象は,その装用者に対する印象評価に影響するため(Leder et al., 2011),パワーアシストスーツを着用した個人は,人間というよりは機械と同じく物体化されて認識されるかもしれない。 パワーアシストスーツを着用した作業者が機械のように物体として認識されるかどうかを検討するためにオンライン実験を実施した。実験の参加者は,パワーアシストスーツを着用して大きな荷物を運搬する男性または女性作業者の画像 (統制としてそれらの作業者のパワーアシストスーツ非着用画像) をみて,Mind Perception尺度(上出他, 2017)ないし機械らしさ・人間らしさを測る尺度(Andrighetto et al., 2017)を用いて評価を行った。 実験の結果,パワーアシストスーツを着用した作業者は,外見的な機械らしさが高く,人間らしさは低く評価されることが示された。その他,ネガティブな感情を経験する能力 (空腹を感じること,苦痛を感じること等) が低く評価されてしまうことが示された。また反対にポジティブな感情を経験する能力 (喜びを感じること,願望を抱くこと等) は高く評価されることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通りに,オンライン実験については概ね完了した。 ただし,COVID-19の感染拡大により,対面実験の中止を余儀なくされたため,実験室での行動実験の実施に遅れが出た。2020年度より,オンライン実験環境を構築し,クラウドソーシングサービスを利用したオンラインでの行動実験を中心に行っている。2021年度意向,当初予定していた実験室での行動実験や生理心理実験に代わり,オンラインでの行動実験のボリューム (国際比較研究等) を増大させる方針に切り替えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の3点である。 (a)行動実験に関する方針転換と国際比較研究への発展: 2021年度に続いて,オンライン実験をCrowdWorks(日本)およびProlific(イギリス等)で行う。日本を含めて複数の国で実施しする。 (b)生理心理実験に関する方針転換: 身体認知特異的な生理指標にもとづき,早期の情報符号化段階でウェアラブルロボット装用者に対する物体的認知が生じるのか,それとも意味解釈の結果で生じるのかを明らかにする予定であったが,COVID-19の収束タイミングが読めないため,生理心理実験の実施については実施せず,代わりにオンラインでの行動実験のボリュームを増大させる。 (c)論文投稿: 研究が完了したものから順次投稿を行う。2021年度に実施した研究は現在執筆中である。
|
Causes of Carryover |
3月末にオンライン実験を実施する予定であったが,準備が間に合わなかったため,その分の次年度使用額が生じた。このオンライン実験は5月に実施予定である。
|