2019 Fiscal Year Research-status Report
顔の識別能力の発達と柔軟性:人工知能を用いた人間性の探求
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19K14383
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上野 将敬 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30737432)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 霊長類 / 個体識別 / 発達 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、他者の顔を識別する能力が、どの程度生得的で、どの程度後天的なのかを探り、動物の中でも際立つ人の社会性の基盤を解明することを目指す。 サルの個体識別をした経験を持つサル研究者と一般成人を比べて、成人期における顔の識別能力の柔軟性を検討した。研究成果は、1件の学会大会において発表し、現在国際学術雑誌Animal Cognitionに投稿している。 また、本研究課題では、人工知能と人の識別能力を比較し、人が持つ識別能力は、人工知能で代替できるのか、人工知能にはない人の特徴が何かを検討することを目的としている。本年度は、ニホンザルの個体識別を行うプログラムの精度を高めるために、岡山県真庭市神庭の滝自然公園付近に生息する勝山ニホンザル集団の成体個体の画像を収集した。 収集した画像をもとに作成したプログラムによって、勝山ニホンザル集団の個体識別を高い精度で行えることを確認した。 さらに、自閉症児を対象として、定型発達児と顔の認知能力にどのような違いがあるかを検討した。自閉症児は、基本的な顔の検出能力を持っているものの、自閉症の症状を強く示す児ほど、顔を検出しにくいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルの個体識別をした経験を持つサル研究者と一般成人を比べて、成人期における顔の識別能力の柔軟性を検討した。研究成果は、第35回日本霊長類学会大会において発表し、様々な研究者から高い評価を得た。さらに、その成果を論文としてまとめ、国際学術雑誌Animal Cognitionに投稿し、査読を受けている。 また、本年度は、ニホンザルの個体識別を行うプログラムの精度を高めるために、岡山県真庭市神庭の滝自然公園付近に生息する勝山ニホンザル集団の成体個体の画像を収集した。 収集した画像をもとに作成したプログラムを実際に現地で使用して、勝山ニホンザル集団の個体識別を高い精度で行えることを確認した。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、まず、人工知能によるニホンザルの個体識別プログラムの精度をさらに向上させる。識別精度を向上させるためには、大量のニホンザル画像を必要とする。そこで、これまでに引き続き、岡山県真庭市神庭の滝自然公園付近に生息する勝山ニホンザル集団の成体個体の画像を収集する。そして、作成したプログラムをもとに、霊長類研究者と人工知能の間で、個体識別に用いる情報に違いがあるかを検討する。 また、ヒトの乳児や自閉症児の顔認知能力に関するこれまでの研究成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿する。
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