2020 Fiscal Year Research-status Report
顔の識別能力の発達と柔軟性:人工知能を用いた人間性の探求
Project/Area Number |
19K14383
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
上野 将敬 近畿大学, 総合社会学部, 講師 (30737432)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 霊長類 / 個体識別 / 発達 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
人を含む霊長類の多くは集団を形成する。集団内では、他者を個体識別し、それぞれの他個体と社会関係を築いている。本研究課題では、人において、他者の顔を識別する能力が、どの程度生得的で、どの程度後天的なのかを探り、動物の中でも際立つ人の社会性の基盤を解明することを目指す。 サルの個体識別をした経験を持つサル研究者と一般成人を比べて、成人期における顔の識別能力の柔軟性を検討した。研究成果は、国際学術雑誌であるJournal of Comparative Psychology誌に投稿し、2021年4月9日に受理された。 また、本研究課題では、自閉症児を対象として、定型発達児と顔の認知能力にどのような違いがあるかを検討した。自閉症児は、基本的な顔の検出能力を持っているものの、自閉症の症状を強く示す児ほど、顔を検出しにくいことが示された。この研究成果を、日本心理学会第84回大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究成果の一部は、国際学術雑誌であるJournal of Comparative Psychology誌に投稿し、2021年4月9日時点でに受理されている。また、自閉症児と定型発達児を対象として、顔の認知能力を比較した研究の成果は、日本心理学会第84回大会において発表した。以上の点に関しては、順調に進展している。 他方で、本研究課題では、ニホンザルの個体識別を行うプログラムの作成と精度の向上のため、岡山県真庭市神庭の滝自然公園付近に生息する勝山ニホンザル集団を対象とした画像・動画の収集を必要とする。しかし、新型コロナウイルスの感染状況により、十分なフィールドワークを行うことができなかった。 以上のことから、本研究課題はやや遅れていると評価することが妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、出張が可能な状況であれば、岡山県真庭市神庭の滝自然公園付近に生息する勝山ニホンザル集団の成体個体の画像を収集し、個体識別プログラムを完成させる。また、最終的に完成したプログラムをもとに、霊長類研究者と人工知能の間で、個体識別に用いる情報に違いがあるかを検討する。さらに、ヒトの乳児や自閉症児の顔認知能力に関するこれまでの研究成果を国内学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、岡山県真庭市への出張を必要としているが、新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、出張を取りやめた。次年度には、可能であれば、2020年度にとりやめた分の出張を行う。
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