2019 Fiscal Year Research-status Report
認知症介護における「希望」の協働的創造と介護者の教授学習過程
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19K14395
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Research Institution | Hamamatsu Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 涼子 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 非常勤講師 (70360203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / ナラティヴ・アプローチ / 教授学習過程 / 希望 / フィンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,介護時に生じるナラティヴのうち,「希望(現実世界に対する将来の可能性)」のナラティヴに注目して,その治療的意味や構造および「希望」のナラティヴ生成を可能にする介護者の教授学習過程を明らかにすることを目指す. 2019年度は,理論面として,認知症介護における「希望」のナラティヴと介護者の教授学習についての先行研究を調査したところ,研究例は限られていたものの,「希望」のナラティヴの生成が「問題を抱える現在」に対して「よりポジティヴな活動や自己像としての未来」を矛盾として提示する役割を持つこと,また認知症高齢者と介護者による「想像遊び」が,現実世界への意味づけを変容させ,「希望」のナラティヴの生成と双方の学びに影響することが示唆された. データの収集では,冬に認知症カフェでの予備調査と4名の作業療法士たちへのグループインタビューを実施した.認知症カフェは,調査対象者であるベテランの作業療法士を中心に,認知症高齢者と介護家族との集団活動が組織されており,本研究は高齢者施設での作業療法場面を主な調査対象地とするものの,作業療法士の日常的な実践や教授学習を理解するための一助として観察を行った.グループインタビューでは,個々の作業療法士たちの介護経験や高齢者観,専門性について半構造化面接を実施した.面接データのナラティヴ分析から,作業療法士たちはナラティヴを作業療法の道具として意図的に用いており,作業療法では,認知症高齢者の個々の体験や生活世界(過去)と結びつけながら,高齢者にとって意味のある作業と役割(将来)を形成すること等が示唆された.これらの語りは,「希望」のナラティヴの生成に関わる作業療法士のclinical reasoning (Mattingly&Fleming, 1994)を示すものであり,今後,作業療法士たちの実際の活動との関係で,語りを検討する必要があると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究者の体調不良(2019年8月まで)により研究の開始が遅れたことに加え,新型ウイルスの世界的流行により,2・3月に予定されていた国内の高齢者施設での観察調査や作業療法士への面接調査,研究会での発表活動を全てキャンセルするに至った.計画されていたフィンランドでの調査と研究打ち合わせも,同様の理由で中止せざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究進捗の遅れに対して,日本での調査については,対象となるベテランの作業療法士の人数を4名に増やして,各自に2,3回程度の面接調査と可能な範囲での観察調査を実施し,データを収集する予定である.調査の本格的な開始に伴い,2020年度に調査遂行に必要な機器類の購入を予定している.一方で新型ウイルスの流行下では,高齢者施設の観察調査の実現は非常に難しいことが予想されるため,作業療法士自身に自らの実践を映像で記録してもらうように依頼するなど,データの収集方法を変えるか,観察データの収集時期を2021年度以降に延期することを検討している.同様の理由で,フィンランドでの調査も,2020年度は作業療法士へのオンラインでの面接調査を中心とし,現地での観察調査は2021年度以降を予定している.共同研究者のHyvarinen教授(Tampere University)との打ち合わせも,当面はオンラインで実施する.理論面については,引き続き先行研究の調査結果をまとめて,計画通り国内外の学会での発表と論文執筆を行う.
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に示したように,2019年度は研究の遅れがあり,国内外での調査や研究発表を予定どおりに実施することができなかった.また調査の遅れに伴い,データの収集や分析に必要な機器類の購入も遅れているが,2020年度に速やかに準備する予定である.
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] Child Development and Adults' Ways of Being in Playworlds2021
Author(s)
Ferholt, B., Lecusay, R., Miyazaki, K., Nilsson, M., Noguchi, S,, Rainio, A., & Watanabe, R.
Organizer
6th Congress of the International Society for Cultural-Historical Activity Research
Int'l Joint Research