2020 Fiscal Year Research-status Report
認知症介護における「希望」の協働的創造と介護者の教授学習過程
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19K14395
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Research Institution | Hamamatsu Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 涼子 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 非常勤講師 (70360203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / ナラティヴ・アプローチ / 教授学習過程 / 希望 / フィンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,認知症介護における「希望(現実世界に対する将来の可能性)」のナラティヴに注目し,「希望」のナラティヴの生成過程やその意味,さらにナラティヴの創造を可能にする介護者の関わりや学びについて,ナラティヴ・アプローチや教授学習過程論の立場から明らかにすることを目的とする.
2020年度は当初,研究対象である日本とフィンランドの高齢者施設での観察調査と,フィンランドのナラティヴ研究所訪問ならびに共同研究者との話し合い, 国際学会での研究発表等を計画していたが,COVID-19の世界的蔓延により,いずれの予定も遂行不可能であった.そのため,「希望」のナラティヴの理論的枠組みの検討に重点を置き,国内の教授学習研究者たちとの定期的なオンライン・ミーティングの実施,過去の観察データのナラティヴ分析,海外の共同研究者とのメールでの意見交換,海外の研究協力者(作業療法士)へのオンライン・インタビューを実施した.
理論面の示唆として,(1)認知症高齢者と介護者の関わりのうち,pretend playを含む「想像遊び」的なやりとりの中に,「希望」のナラティヴがしばしば創出すること,(2)こうした遊びでは,高齢者の過去の経験に基づいたドラマ化が発生し,それが「希望」のナラティヴの創造および高齢者の「なりたい」役割やポジティブな自己像の(再)構築につながること,(3)遊びの展開と維持には,高齢者独自の「声」を聴きとり再現する介護者側のrevoicingが重要であること,(4)個々のケース分析に焦点化しやすいナラティヴ・アプローチに対して,「想像遊び」におけるナラティヴの発達という,生涯発達的視点を導入すること,等の結果が得られた.成果の一部は国内学会で報告したが,今後は上記の知見を踏まえた,観察・インタビューデータの質的検討を進めたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の更なる流行に伴い,研究対象である国内外の高齢者施設での調査は引き続き不可能であった.同様の理由で,フィンランドの研究所訪問と共同研究者との話し合いも遂行することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の遅れを補うために,国内外の対象施設での観察調査の実施と,ベテランの作業療法士(4名程度)への複数回のオンライン・インタビュー調査を計画している.一方,現地の観察が困難な状況が続く場合は,過去に収集したデータを分析するか,現場の作業療法士に撮影を依頼してデータを収集するなど,調査方法の変更を検討している. フィンランドの共同研究者には,引き続き,メールまたはオンライン・ミーティングによる研究打ち合わせを行う.国際学会はオンラインによる発表を予定しているが,同時に,主に理論面の成果については論文の執筆を行う.
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Causes of Carryover |
経費の多くは旅費に充てていたが,「現在までの進捗状況」に記したように,COVID-19により国内外での調査とフィンランドの研究所訪問が不可能になった. 2021年度も国内外の研究出張を計画しているが,それが難しい場合は,過去の観察データ(ビデオ映像)のデジタル化や文字化(トランスクリプト)に用いる予定である.
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Research Products
(3 results)