2020 Fiscal Year Research-status Report
主体的な学習はなぜ効果的なのか―誤検索効果を用いた検討
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19K14405
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
田中 紗枝子 徳島文理大学, 人間生活学部, 講師 (80784496)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 記憶 / 学習 / 検索 / エラー / failed retrieval |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は昨年度から引き続き,手がかり単語から連想され得る単語の数が,誤った情報を検索した後の正情報の学習促進に及ぼす影響について検討した。 連想され得る単語の多い手がかり単語と少ない手がかり単語100語について,意味的に弱い関連性のあるターゲット単語をそれぞれ1つずつ設定し,これをペアとして学習させた。このうち半数は手がかり単語を元にターゲット単語を推測してから正答(設定されたターゲット単語)を対提示するテスト条件,残りを読んで覚える統制条件に割り当てた。その結果,最終的な単語対想起課題(手がかり単語を元に,正答を想起させる課題)の成績はテスト条件の方が統制条件に比べて高く,これまでと同様の誤検索効果が示された。またテスト条件と統制条件の両条件において,連想され得る単語の数が少ない手がかり単語のペアの方が,連想され得る単語の数が多いペアより想起成績が高かった。 これまでの研究で,手がかり単語からターゲット単語となる語を複数推測させることによって検索時に連想される情報量を増やしても,誤検索効果による学習促進への影響は見られないことを明らかにしてきた。今回の研究は手がかり単語そのものが持つ情報量が誤検索効果に及ぼす影響について検討したものであり,これらの結果を踏まえると,誤った情報を検索することによる学習促進効果は,検索時に意味的な情報がより多く活性化することによるものではない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響により,学生の入構が制限されたり,教育面でこれまでとは異なる対応を求められたりするなど,申請時に想定しなかった事態が発生したことが主な理由である。これらにより,予定していた研究を完遂することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず,令和2年度に実施予定であった,誤情報を検索するタイミングが誤検索効果に及ぼす影響を明らかにするための研究を行う。これまでの研究と結果を比較するため,新型コロナウィルスへの感染対策を十分に講じながら実験室での実施を予定しているが,状況に応じてオンラインでも実施できるようプログラムの調整を行う。 また研究期間の終了に向けて,結果を学会や学術雑誌で積極的に公表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により,当初予定していた研究を完遂することができず,謝金や成果報告のための予算を一部使用しなかった。また学会参加など国内外への出張が制限されたため,旅費を使用しなかった。これらは2021年度に実施する研究への参加者に対する謝金やデータ分析のための人件費,また成果報告のための学会参加費や英文校閲費に充てる。
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