2021 Fiscal Year Research-status Report
心理援助職の倫理的困難の実態及び倫理的意思決定能力の発達的変化に関する研究
Project/Area Number |
19K14411
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
慶野 遥香 筑波大学, 人間系, 助教 (10633224)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心理職 / 職業倫理 / 臨床心理学 / 倫理的困難 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、実践に役立つ心理援助職の倫理教育の在り方に関する基礎的知見を得ることによって、心理援助職の倫理性向上に貢献することである。 2021年度に実施した調査:2020年12月~2021年3月にかけて実施した心理職の倫理的困難に関する質問紙調査の分析を行った。また、この調査で組織や連携の場での倫理的困難の報告が多くみられたことを受けて、オンライン上でこうした倫理的問題で心理職がどういったことに価値を置いているかを明らかにすることを目的に、グループインタビュー調査を実施した。対象は臨床心理士または公認心理師の資格保持者、時期は2021年4月であった。 結果:質問紙調査のデータ分析では、経験年数や大学・大学院及び卒後の職業倫理に関する学習経験と、職業倫理の知識や判断の自信との関連を検討した結果、経験年数や卒後の学習経験が高いほど自信も高くなる傾向があった一方、大学・大学院の学習経験は職業倫理の自信との関連が見られなかった。 また、グループインタビューの結果からは、心理職が組織や連携の場で起こる倫理的問題において、「対象者や他職種との対話の中で、相手の価値観や考えを聞き、心理職としての倫理規範や専門的視点を伝えることを通して、合意形成や相互理解、目標の共有を図る」ことを重視していることが示された。 考察と意義:質問紙調査の結果から、現在までに大学・大学院の心理職養成課程で行われている職業倫理教育は、質的・量的に十分ではない可能性が示唆された。また、今後の心理職を取り巻く状況において、組織や連携の問題はますます重要になると考えられ、対話という観点も踏まえて倫理教育の方法を検討していく必要があると考えられた。 以上の成果をもとに学会発表を行い、博士学位論文を執筆して学位を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度当初の予定では、心理職の職業倫理の発達プロセスに関するインタビュー調査を実施する予定であった。ただ、質問紙調査の結果を精査し、現代特有の組織や連携に関する倫理的困難が多く見られていたことから、この点に関してより詳細な検討が必要と考え、グループインタビュー調査を先に行った。さらに博士学位論文を執筆したこともあり、当初予定していたインタビュー調査は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のインタビュー調査を実施する予定である。コロナ禍であることや、対象者が実務に当たる心理職で平日日中の都合がつきにくいことが予想されるため、オンラインも活用して実施する。
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Causes of Carryover |
主に学会参加のために旅費を計上していたが、新型コロナウイルスの影響ですべてオンライン開催となったため、参加費以外の旅費の必要が生じなかった。 また、申請時は海外尺度の翻訳と質問紙調査実施に関する予算を計上していたが、インタビュー調査に方法を変更したため、予定よりも少ない支出となった。
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Research Products
(1 results)