2020 Fiscal Year Research-status Report
ASD者に特化した就労準備性の探索と適切なアセスメント方法の開発
Project/Area Number |
19K14417
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西村 大樹 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 助教 (20832976)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / 就労準備性 / アセスメント / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、青年期成人期の自閉スペクトラム症(ASD)患者の支援、特に就労に関する支援に注目が集まっている。しかし、ASDの就労に関する実証的な研究は少なく、標準化されたアセスメントツールも限られている。そこで我々は、ASDの当事者が安定的に就労するために必要な要因について明らかにし、ASDに特化した就労準備性のアセスメントツールを開発することを目的に研究を進めている。 令和元年度は、ASDの診断があり、医療機関や福祉・労働機関での就労支援を経て1年以上就労が継続できている9名を対象に、半構造化面接によるインタビュー調査を行った。令和2年度は、この調査で得られたデータについて、KJ法を用いて分類を行った。その結果、就労するために必要なこととして、①健康管理(睡眠リズム、継続した通院、ストレス発散など)、②自信(不安の減少、できることを知るなど)、③働くための意欲、④集団への慣れ(人に毎日会うことや環境に慣れること)、⑤コミュニケーション(挨拶や言葉遣いなどの基礎的なスキル、人と話す機会を持つことなど)、⑥自己理解(ASDの特性、自分の得手・不得手、仕事の適性など)⑦労働習慣(継続して通うこと、基本的な体力など)、⑧周囲からのサポート(家族や仲間、支援スタッフ)、⑨仕事のイメージ、⑩仕事のスキル(報連相、忘れもへの対策、メモや確認など)、が抽出された。また、実際に作業や仕事の体験をして振り返りを行うことで、これらの就労に必要な準備性を整えていったことも示唆された。さらに、データ解析で得られた結果や複数の参考文献をもとに、アセスメントツールを開発するための質問項目のリスト(全67項目)を作成し、信頼性・妥当性を検証するための質問紙の選定を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響で調査協力が得られていた医療機関での調査が行えず、研究計画の変更を余儀なくされたことと、研究代表者が所属する機関(部局)には研究倫理委員会が存在せず、倫理的な問題をクリアするのに時間を要し、量的な質問紙調査に取りかかれなかったためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
質問紙調査を行うための準備は整っている。今後は、倫理的な問題をクリアしたのちに、当事者と一般健常者を対象とした質問紙調査を行い、信頼性・妥当性の検証を進める。
|
Causes of Carryover |
成果発表を予定していた学会が延期になり旅費が不要になったこと、予定していた質問紙調査が実施できず、人件費などの調査にかかる費用が掛からなかったことが、次年度使用が生じた理由である。今後、学会での成果発表や質問紙調査を実施する予定であり、繰り越した金額はその費用として使用する予定である。
|