2021 Fiscal Year Research-status Report
ASD者に特化した就労準備性の探索と適切なアセスメント方法の開発
Project/Area Number |
19K14417
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西村 大樹 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 助教 (20832976)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 就労準備性 / アセスメント / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、青年期以降の自閉スペクトラム症(ASD)患者の支援、特に就労に関する支援に注目が集まっている。しかし、ASDの就労に関する実証的な研究は少なく、標準化されたアセスメントツールも限られている。そこで我々は、ASDの当事者が安定的に就労するために必要な要因について明らかにし、ASDに特化した就労準備性のアセスメントツールを開発することを目的に研究を進めている。 令和三年度は、就労継続できているASD患者へのインタビュー調査や複数の参考文献をもとに作成した「自閉スペクトラム症傾向者の就労準備性評価尺度」の信頼性・妥当性の検討を行った。20~30代の604名(うち79名には2週間の間隔をあけて再調査を行った)を対象に、「自閉スペクトラム症傾向者の就労準備性評価尺度」、「AQ-J」、「K6」、「自己理解尺度短縮版」を用いた自記式質問紙調査を実施した。また最近の就労状況についても回答を求めた。 「自閉スペクトラム症傾向者の就労準備性評価尺度」の因子構造を明らかにするために、探索的因子分析を行ったところ、5因子39項目(「仕事に必要なスキル」、「健康維持」、「基本的労働習慣」、「社会生活」、「自己理解」)が抽出された。各因子の内的一貫性と再検査信頼性の結果も十分な値が得られた。また、各因子とK6、AQ-J、肯定的側面の自己理解との間に、中程度以上の相関があり、就労群と非就労群との間に有意差が認められた。このことから、この尺度は一定の信頼性と妥当性を有していると考えられた。 現在は、ASDの診断を有する者を対象とした調査を継続して行っており、今後、更なる妥当性や臨床的な有用を検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響で調査協力が得られていた医療機関での調査が行えず、研究計画の変更を余儀なくされたこと、また、研究代表者が所属する機関(部局)には研究倫理委員会が存在せず、倫理的な問題をクリアするのに時間を要したことが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ASD患者(就労群、非就労群)を対象とした調査を継続して行っており、データが集まり次第、更なる妥当性や臨床的な有用を検証するための統計解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
成果発表を予定していた学会が延期になり旅費が不要になったこと、予定していた質問紙調査の開始が遅れ、患者群に対する調査が十分に進んでいないためである。今後、学会での成果発表や臨床群に対する質問紙調査を継続して行っていく予定であり、繰り越した金額はその費用として使用する。
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