2019 Fiscal Year Research-status Report
Developing a Psychological Support Model utilising Pop culture
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19K14422
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
笹倉 尚子 県立広島大学, 公私立大学の部局等(広島キャンパス), 講師 (00800913)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心理支援 / 思春期・青年期 / ポップカルチャー / サブカルチャー / 漫画・アニメ |
Outline of Annual Research Achievements |
思春期・青年期を対象とした心理支援に関する事例研究の中には、漫画やアニメ、ゲーム等のポップカルチャーの話題を扱うことが有効に働いた例がある。本研究は、カウンセラーがポップカルチャーの話題を心理支援のなかでどのように扱い、活用しているのかを調査研究によって明らかにすることを目的として遂行された。 2019年度はまず、ポップカルチャーが話題となった思春期・青年期の事例研究論文を収集し、カウンセラーがそうした話題を扱うプロセスを明らかにするため事例のメタ分析を行った。その結果、(1)「クライエントが好きなものを提示すると、カウンセラーは内容を共有しようとする」「共有された内容をもとにクライエントとカウンセラーで感想を語り合う」「クライエントの語る内容をカウンセラーは彼らの内面と重ねて理解しようとする」というカウンセラーの聴き方のプロセスが見出された。また(2)カウンセラー側が自己開示等の積極的な行動をとっていることも明らかとなった。この結果について、日本学生相談学会第37回大会にて口頭発表を行った。また関連する研究成果の一部について、日本心理臨床学会第38回大会自主シンポジウムにて口頭発表を行った。 次に、上記の結果をもとに選択式・記述式のWebアンケートを作成し、カウンセラーを対象とした予備調査を実施した。その結果、文献の分析で見出された知見と同じく、調査に協力したカウンセラーの多くがポップカルチャーの話題を見立てや介入に役立つ資源とみなし、自己開示等の積極的な行動をとっていることが分かった。一方で(3)単純な感想や印象は伝えるものの詳細な自己開示は控えるといった傾向が見出されるとともに、(4)ポップカルチャーの話題が回避的・防衛的に働くという実感を持っているといった新たな視点も明らかとなった。この結果については、2020年度日本心理臨床学会第39回大会にてポスター発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はカウンセラーを対象としたアンケート(本調査)を2019年度内に実施する予定であったが、予備調査を行うに留まったため「やや遅れている」と判断した。その背景として、海外文献の精査と類似テーマに関する論文執筆に時間を要したことに加え、予備調査の結果を受けてのアンケートの質問項目の修正、および協力先の開拓に難航したことがあげられる。アンケート(本調査)に関しては2020年度に持ち越すこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
カウンセラーがポップカルチャーの話題をどのように扱い、心理支援として活用しているのかについて、カウンセラーを対象としたWebアンケートを実施し、分析を行う予定である。並行してカウンセラーを対象としたインタビュー調査を行い、実際の心理支援の中でポップカルチャーを活用した例についてより実践的なデータを収集する。また、調査対象者にポップカルチャーの活用に積極的でないカウンセラーを含めることにより、ポップカルチャーを用いるアプローチが抱える問題点や課題も見出されると予想される。 これらの結果を統合することにより、心理支援の中でカウンセラーがポップカルチャーを活用する際の具体的な指針が描き出せると考えられる。
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Causes of Carryover |
アンケート調査の本調査を2019年度内に終えることができなかったため謝金・その他に、また感染症の流行により活動予定であった研究会が中止となったため旅費に余剰金が生じ、それぞれ2020年度に繰り越されることとなった。
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