2019 Fiscal Year Research-status Report
アルコール使用障害が併発した心的外傷後ストレス障害に対する認知処理療法の適用
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19K14424
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
高岸 百合子 駿河台大学, 心理学部, 准教授 (40578564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心的外傷後ストレス障害 / アルコール使用障害 / 認知処理療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,心的外傷後ストレス障害(PTSD) とアルコール使用障害(AUD) の併存症(PTSD/AUD) に対して認知処理療法(Cognitive Processing Therapy:CPT) を適用するための治療プロトコル及び研究手順書の作成を行った。具体的には,文献的な検討を重ねてプロトコル原案を作成し,CPT開発者であるRescik 博士,及び米国において退役軍人を対象としてPTSD/AUDにCPTを試行した研究実績のあるKaysen博士と意見交換を行い,プロトコルの改良を行った。治療プロトコル確定後から,研究実施の手順書の作成を開始するとともに,介入実施施設として予定している機関において,研究協力体制を整えた。 本年度末にはCOVID-19の世界的な感染拡大に伴い,研究代表者の所属する研究機関及び介入実施施設においても感染拡大防止措置が講じられた。両施設への立ち入りが制限されるとともに,最低限の研究活動維持のための活動を除き研究活動が制限されることとなった。そのため,上記研究プロトコルを用いた臨床試験の開始時期を延期せざるを得ず,また,プロトコルの一部変更を余儀なくされることとなった。 研究成果としては,日本トラウマティック・ストレス学会誌に,CPTの介入内容と現状,最新の重要な知見と課題に関する総説を発表した。 総合的には,臨床試験の実現に向けた準備を整えることに関しては,可能な範囲において研究計画に則り進行したと考えられる。しかしながら,現在の状況においては,臨床試験を実現するためにはCOVID-19の感染拡大防止に万全を期す必要があり,そのための具体的方策(例えば,オンラインで介入を実施するなど)については模索中であり,早急に今後の対応策を検討することが求められる状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の前半では治療プトロコルの作成,後半では臨床試験実施に向けての準備を行い,準備が整い次第,試験を開始する予定であった。しかしながら,本年度はCOVID-19の感染拡大防止措置により,研究代表者の所属する研究機関及び介入実施施設においても年度末より立ち入りが制限される事態となった。また,研究活動についても,研究活動を維持するための最低限の活動を除いては制限を課す措置が継続されいてる。上記のような理由から,本年度中に作成した研究実施の手順書のとおり臨床試験を開始することは困難な状況となった。 上記,COVID-19の感染拡大に伴い研究計画の変更が余儀なくされるような事態は,研究計画の申請時には想定し得なかった。そうした不測の事態に対応するために,一旦臨床試験の開始を延期し,研究手順の再検討に着手したところであるが,試験開始に向けての準備に要する時間が次年度前半にもさらに必要であると予測される。今年度中に臨床試験開始を見込んでいた当初計画に対し,年度末時点で試験開始に至っていないこと,次年度に試験を開始するための準備にさらに時間を要する見込みであることから,進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の入構制限や研究活動の自粛要請が解除される時期については未定であるが,少なくとも介入実施施設において感染リスクのマネジメントが十分に行えていると判断されるまでは,研究協力のためにPTSD/AUD患者を介入実施施設に呼び入れて介入を実施することは避ける必要がある。 本研究は,人を対象として行う治療的介入がその主たる研究内容であり,当初計画では,対面によって治療的介入の機会を提供する予定であった。しかしながら,今般の状況において,COVID-19の感染リスクが高いとされる状態(密室において,対面で長時間にわたる会話を行う)でその機会を提供することは,研究参加者及び研究実施者の健康を損なう恐れがあり,倫理的にも許されるものではない。COVID-19は,一時的に感染拡大が抑えられたとしても再燃の恐れもあるとされることから,研究再開にあたっては,オンラインなど,対面によらない方法で治療的介入を提供する体制を整えることも,選択肢の一つとして検討する必要がある。今後は,まずは治療的介入の提供形態をオンラインに変更することによって生じる諸々の問題(情報セキュリティ対策,オンライン面談可能なデバイスへの研究協力者のアクセシビリティ,介入を提供する環境整備とその利用に係るコスト,治療的効果の差異等)を検討することが求められる。そのうえで,現況に合わせて,安全を担保しながら実施可能な形に研究プトロコルの調整を行うことで,PTSD/AUDに対するCPTの実施可能性,有効性を検証するための臨床試験を開始するために必要な準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19感染拡大予防措置に伴い,研究機関への立ち入り及び研究活動の制限が実施され,研究プロトコルの変更を余儀なくされたことから,介入実施に係る費用の使途も再考が必要となった。また,研究打ち合わせを行うために計上していた外国旅費についても,上記理由による渡航制限のために,打ち合わせ手段を当初予定から一部変更し,本年度においては支出不要となった。 今後は,次年度に確定させる研究プロトコルに従い,臨床試験を行う環境を整えるために必要となった物品を購入するほか,研究コーディネーターの謝金等,臨床試験の遂行に必要な費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)