2019 Fiscal Year Research-status Report
SWAP-200によるパーソナリティ障害査定過程の日米比較研究
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19K14425
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
鳥越 淳一 開智国際大学, 国際教養学部, 准教授 (90635880)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 依存性 / パーソナリティ障害 / SWAP-200 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語版Shedler-Westen Assessment Procedure-200(以下SWAP-200)とのパーソナリティ障害(以下PD)プロフィールとDSM-IVのII軸プロトタイプ評価(Westen, Shedler & Bradley, 2006)の相関係数を確認したところ,ほとんどの指標で,これまでの研究で確認されているような相関(中程度)が見られたが,依存性PDの指標では相関が認められなかった。すなわち,日本の臨床家が捉える依存性PDの臨床像は,米国のいずれのPDとも正の相関が見られず,「妄想性」「反社会性」「自己愛性」「受動攻撃性」と弱いないし中程度の負の相関が認められたことは,SWAP-200では捉えきれない日本のPDが示唆されているように思われた。そこで日本の臨床家がどのように依存性PDを捉えているか項目を確認したところ,(DSMでは依存性PDの中心的特徴として能力に関する悲観主義と自己不信が挙げられているのに対し)日本では能力面よりも感情面で弱い立場にいることの方が「依存性」の問題と関連していると知覚されているようであった。また,DSMでは他者に責任を求めたり,他者から面倒を見てもらえないことを不安に思ったりといった他者との直接的な関わりの記述が多くみられるが,今回の研究では自己非難や自己憐憫を強調するような自己に関する言及が多かった。「依存」という明らかに他者との関わりを必要とする状況下において,自己の弱体化を必要とする傾向は日本に特有な対人関係の取り方なのかもしれない。そこで,DSMの基準では捉えられない日本特有の依存性にかかわるパーソナリティ障害があるのではないかということを,日本精神分析学会第65回大会にて,かねてより土居(2007)によって指摘されてきた甘えの構造とからめて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日米の査定過程の比較に関してのポイントが依存性に絞られたこと、また土居の論じる甘えの構造が参考になるのではないかというあたりがつけられたことは今後の研究活動を方向付けることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の中でより鮮明になった研究ターゲット(日本人の依存性にまつわるパーソナリティの問題)を中心に検討をすすめていきたい。また予定通り、アタッチメントやいつくかの特性を通して多角的にパーソナリティ障害の査定について検討していくことを考えている。アタッチメントに関しては、詳細な分類がなされ、障害や精神病理の心的過程の性質に焦点を当てるようにデザインされている動的-成熟モデル(Dynamic Maturational Model)に基づいたAAI談話分析(DMM-AAI)を基軸に考えており、特性については拒絶感受性の検討を予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度末に、研究に必要となってくるアタッチメント(DMM-AAI)評価の修得を予定していたが、コロナウィルス感染拡大防止の観点から海外での研修が取りやめになり、次年度に移行させたため。
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