2021 Fiscal Year Research-status Report
SWAP-200によるパーソナリティ障害査定過程の日米比較研究
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19K14425
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
鳥越 淳一 開智国際大学, 国際教養学部, 教授 (90635880)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 依存性パーソナリティ障害 / 甘え / 評価者側の反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、日本語版SWAP-200は概ね原版と同等の信頼性・妥当性を保持していると考えられるものの、依存性パーソナリティ障害(以下、パーソナリティ障害をPDと表記)に関してはDSM基準における同障害との相関が比較的低いことが判明していた。そこで本年度は日本語版SWAP-200で評価される依存性PDが原版SWAP-200のそれとどのように異なるのか、日本における依存性PDの評価を従来から議論がなされてきた「甘え」の構造から検討してみた。SWAP-200はパーソナリティ障害に関する共通言語を作成するという目的で、各国の翻訳版はすべて、原版が作成された米国の被検者データに基づいて統計的に処理される。しかし、米国では自立を健康的、依存(非自立)を病的と捉えやすいのに対して、日本では大切にされたい、安心させてもらいたいという「甘え」の感情は許容されており、他者の依存欲求への許容度が米国と比べて明らかに高いという文化的な解離が存在している。Shedler & Westen(2004)は、依存性PDと回避性PDの違いを、抑うつに対する対処方法として人に近づくか、人から離れるかの違いであると述べているが、それに沿って言えば、米国の依存性PDは「無力で従属的でしがみつくように過度の依存を求めてくる弱者」であるのに対し、日本の依存性PDは「消極的に離れていくことで他者に救済心を喚起し,依存を許してもらえる弱者」であると言える。これに関連する逆転移を踏まえて,アブダクティヴに説明するのであれば,依存性PDを診断するとき,米国人査定者は被査定者にしがみつかれるのを突き放すような心の動き方をするのに対し,日本人査定者は被査定者が離れていくのを捕まえるような(手を差し伸べるような)心の動き方をしているのかもしれない。査定者側の反応(過程)を評価にどうのように組み込むが重要になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国のパーソナリティ査定における過程評価について、コロンビア大学の研究チームとアタッチメントに関する研究チームのコンサルテーションを受けながら、概ね、パーソナリティを評価するにあたり過程に着目するという視点について検討できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は引き続き、日本語版SWAP-200が報酬への接近行動や罰からの回避行動、及びエフォートコントロールといった面接では言語化されないプロセスをどの程度把握可能か調査・検討する。
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Causes of Carryover |
これまでコロナ禍の影響で病院やクリニックで実際の臨床群を対象とした調査を行うことができなかったため。今年度は精神科クリニックや精神科病院に協力を仰ぎ、調査を進めていくようであり、その謝金として主に使用していく予定。
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