2020 Fiscal Year Research-status Report
Empirical reserach for the mechanism of anxiety reduction by using experimental psychological theories
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19K14427
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松浦 隆信 日本大学, 文理学部, 准教授 (40632675)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不安 / 心理療法 / 自己受容 / 動機づけ / 新型コロナウイルス / 曝露療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、不安を軽減するために用いられる心理療法の技法がなぜ有効に作用するのか、その根拠を心理学で使われている様々な理論を参照しながら明らかにすることが目的である。2年目の研究では、1年目に実施した「不安が生じる背景にはより良く生きたいと思う気持ちが存在するため」という知識を伝達することのみでは不安そのものは軽減しなかった研究成果を踏まえ、上記教示に加えて「不安を感じながらもその場面に踏み込むことが必要である」ことを教示することによって得られる効果を検討した。 新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、オンライン調査会社を通じて日常生活で不安を感じやすいと回答のあった方々、および新型コロナウイルス感染症にまつわる不安を強く感じているとの回答があった方々という2つの調査対象者群に対して、上記教示を伝達する動画資料を作成の上、調査対象者に提示し、1か月間対処を試みてもらった。動画視聴前後においては不安感や自己受容の程度を測定する質問紙調査、および不安に対する捉え方について自由記述で記載を求め、いずれも定量的に分析を行った。その結果、いずれの群においても昨年度の研究結果とは異なり、不安感については一か月後に有意に軽減された。また、自己受容の程度についても有意傾向であったが増加が見られた。自由記述の結果からは、不安を感じた際の自分の気持ちを冷静に考えられるようになったとともに、不安に思う自分自身を否定せず受け入れられるように変化した。 以上の結果から、不安そのものが軽減されるには不安を感じる場面を回避せず、不安への「馴れ」を得る必要性が明らかになった。一方で、「不安が生じる背景にはより良く生きたいと思う気持ちが存在する」という知識の伝達は、不安を感じることはやむを得ないとの冷静な心構えを育み、不安を感じる場面に向き合うための動機づけを高める効果が得られるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度までに実施した研究によって、不安に対する意味づけの変容(不安が生じる背景にはより良く生きたいと思う気持ちが存在する)を促す心理療法の作用機序に関して、1年目の研究成果も踏まえた上で知見の蓄積を図ることができた。研究開始当初に明らかにしようと想定していた課題に対して一定の成果が得られたため、概ね順調に研究の遂行が行えたと評価している。 一方で、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、リモート授業の準備等への対応、図書館等の各種研究設備の使用制限、調査対象者のリクルート機会の制限などが影響し、3年目以降の研究に向けた仮説の設定や予備調査などが十分に行えなかった。この点においては想定よりもやや進捗が遅れたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗の遅れに対しては、研究設備の使用再開、オンライン調査の活用を含む、昨年度に得た新たな研究実施方法に関する経験や知見を踏まえ、今年度上半期のうちに概ねの仮説を設定の上、下半期にかけて1つから2つの調査(予備調査含む)を実施する段取りによって遅れを取り戻すことが可能だと考えている。新型コロナウイルス感染症の影響が継続している中ではあるが、積極的にオンライン型の調査を取り入れることによって研究の滞りを最小限に抑える工夫を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響により移動が困難となり、学会参加および研究打ち合わせ等に関する旅費の支出が全て無くなった。また、物品費についてもオンラインによる研究実施が中心となった影響で、用紙およびインクカートリッジ等の物品購入の必要性が減少し、使用機会が無かった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。 本金額分は、次年度の研究においても新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン調査を中心に進めざるを得ないことが想定されるため、その環境整備に対する物品費ならびに調査対象者リクルートに要する費用に充当し、研究を進める予定である。
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