2019 Fiscal Year Research-status Report
箱庭療法の治癒機制に関する実証的研究―異物との関わりに生じる心的プロセスから
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19K14442
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
地井 和也 茨城大学, 教育学研究科, 講師 (10826811)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 箱庭療法 / 異物 / イメージ変容 / 治癒機制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,箱庭療法の治癒機制の本質を明らかにし,また, それに付随して,人が自我異和的な心的対象である「異物」との日常的遭遇により生じる心理的課題を解消していくプロセスを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために,箱庭によるイメージ表現によって生じる心理的変化の対象を「今の自分には受け入れがたいと感じるアイテム」に投影するネガティブイメージに限定し,参加者を以下の3群に分け,受け入れがたいアイテムのイメージや受け入れがたさの 変化を測定した量的データ,及び半構造化面接により得た質的データを群間で比較することを計画した。 条件1:受け入れがたいアイテムに加え複数のアイテムを自由に使用する条件 条件2:受け入れがたいアイテムのみ使用する条件 条件3:受け入れがたいアイテムを使用せずに他のアイテムで自由に制作する統制条件 2019年度はこの3条件の下で行った45名分の実験における量的データを整理し,基本的な統計的分析を行った。また,2019年6月開催の日本ユング心理学会第8回大会,11月開催の日本箱庭療法学会第33回大会に参加し,箱庭療法や描画法などのイメージ表現に対する基礎的研究について資料を収集し,それらを参考にしながら,上記の量的データの分析結果に関する論文の執筆を進めた。次年度はその論文を完成させ投稿する予定である。なお,質的データに関しても修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析に着手しており,次年度も継続して分析を進め,結果を国内学会において発表,および論文として投稿する予定である。 また,参加者に数回の継続的な箱庭制作を依頼し,通常の箱庭療法と近い設定による継時的な変化を観察する調査研究の計画については,すでに3名分,各4回ずつの箱庭制作とインタビューデータを得ているが,分析は次年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに得られた実験データに対する量的分析と質的分析は,どちらも完全に終える段階までは至っていないが,おおむね計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の3条件による実験における量的データの分析結果について引き続き論文の執筆を進め,次年度中に投稿する,また,質的データの分析結果については国内学会で発表し,その議論内容も踏まえて論文を執筆,投稿する予定である。 また,複数回の箱庭制作による継時的な変化を観察する調査研究の計画については,得られたデータについて,外部委託により半構造化面接の音声データを逐語化し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる質的分析を行った結果を基に,論文の執筆に取り掛かる予定である。
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Causes of Carryover |
外部委託による逐語データ作成,および自宅や外出先においても研究可能なノートPCと統計ソフトの購入が2019年度内に必須とならず,次年度にずれ込んだためである。次年度は上記の費用に加え,主に研究成果の発表や資料収集のための国内学会等への参加費・旅費,論文執筆のための文献収集の費用として使用する予定である。
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