2022 Fiscal Year Annual Research Report
箱庭療法の治癒機制に関する実証的研究―異物との関わりに生じる心的プロセスから
Project/Area Number |
19K14442
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
地井 和也 茨城大学, 人文社会科学部, 講師 (10826811)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 箱庭療法による内的変容 / 異物のイメージ変容プロセス / 異物の受け入れがたさの低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,箱庭療法の治癒機制の本質を明らかにし,また,それに付随して,人が自我異和的な心的対象である「異物」との日常的遭遇により生じる心理的課題を解消していくプロセスを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために,箱庭によるイメージ表現によって生じる心理的変化の対象を「今の自分には受け入れがたいと感じるアイテム」に投影するネガティブイメージに限定し,参加者を以下の3群に分け,受け入れがたいアイテムのイメージや受け入れがたさの変化を測定した量的データ,及び半構造化面接により得た質的データを群間で比較することを計画した。 条件1:受け入れがたいアイテムに加え複数のアイテムを自由に使用する条件 条件2:受け入れがたいアイテムのみ使用する条件 条件3:受け入れがたいアイテムを使用せずに他のアイテムで自由に制作する統制条件 2022年度は上記の実験で得られた量的データの統計的分析と質的データのM-GTAによる質的分析を行い,それらの結果を報告する論文の執筆を進めた。統計的分析の結果,3条件とも箱庭制作によって受け入れがたいアイテムに対する受け入れがたさの有意な低減が生じたことが確認された。また受け入れがたいアイテムのイメージ変化については,「穏やかさ」因子において箱庭制作後に有意な増加が見られた。また,質的分析によって,条件間で受け入れがたいアイテムの受け入れがたさの低減やイメージの変化の生起プロセスが異なることが示唆された。条件1では他のアイテムとの関係性の構築によりイメージ変容が多く生じていたのに対し,条件2では受け入れがたいアイテム自体と制作者の心的距離感の変化が特徴的であった。条件3は箱庭制作によって生じたポジティブ感情が受け入れがたいアイテムへの受け入れがたさを低減させていることが示唆された。 上記の結果は複数の論文に分割してまとめ,近いうちに投稿予定である。
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