2020 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある青少年の適切なインターネット利用を促進する心理教育プログラムの開発
Project/Area Number |
19K14450
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
小倉 正義 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50508520)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 知的障害 / インターネット利用 / 心理教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,主に本調査のためのレビューや資料収集,保護者や支援者向けの研修プログラムや支援に役立つリーフレットの開発,保護者向けのアンケート調査の準備を進めた。具体的な内容を以下に述べる。 まずは,国内外の最新の知見を収集するために,書籍や論文のレビュー,発達臨床に携わる専門職・支援者への聴き取りを行った。その結果,特に発達障害・知的障害の青少年とゲームについての知見や現況に関して整理を進めることができ,障害特性に配慮するだけでなく,ゲームのタイプやプレイスタイルも考慮に入れた支援が重要であることが確認された。 次に,保護者や支援者向けの研修プログラムの開発や支援に役立つリーフレット作成のための資料を得ることを目的として,発達障害の青少年の支援やインターネット利用に詳しい臨床心理学の専門家,児童精神科医師の協力のもと,保護者・支援者を対象として「発達障がいの青少年のインターネット利用を考える」というテーマでZoomウェビナーを用いての研修会を試行的に実施した。研修会の参加者を対象にアンケートを実施し(回答者:124名),研修が役立ったかについて尋ねた結果,「発達障がいとインターネット利用の関連」「ネット依存の予防」「ネットの使いすぎ・依存への対応・介入」については90%以上の人が,「ICTリテラシー」「発達障がいとSNS利用」についても88%以上の人が「とても役立った」「役立った」と回答した。また,今後知りたい内容として,「ネット依存やSNSトラブルに関する困難事例とその解決方法」「性とインターネット」「発達障害の女性のインターネット利用」「成人以降のインターネット利用」など様々な内容が挙げられ,具体的なニーズの内容と関心の高さが示された。 さらに,地域の関係諸機関と連携を深め,2021年度に心理教育プログラムを実施するための準備を進めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず,本年度は国内外の学会が中止,もしくはオンライン開催となったために十分に学会や研修会に参加することはできなかったが,発達障害者への支援,オンラインゲーム,SNS利用と心理的影響についての論文や文献を中心にレビューを行い,調査のための準備と心理教育プログラムを作成するための資料を収集した。これらのレビューをもとに,①発達障害・知的障害のある青少年の利用と,利用におけるトラブルの実態を明らかにすること,②インターネット利用上のトラブルを解決した事例,トラブルを予防できた事例を収集し分析することで,トラブル解決や予防に必要な要素を明らかにすることを目的として,発達障害・知的障害のある青少年の保護者を対象としたアンケート調査を実施するという方針を決めた。そして,そのためのアンケート調査内容や分析方法の精査を進めた。また,対面でのアンケート調査の依頼や実施が困難になることも考慮に入れて,オンラインでのアンケート調査を実施するための準備も進めた。このアンケート調査と並行して,同じ目的で保護者や支援者を対象としたインタビュー調査の実施の準備も進めた。 次に,前述したように保護者・支援者向けの研修会を試行的に行い200名弱の支援者・保護者が参加し,参加者にアンケート調査も実施した。研修に協力してもらった専門家の意見や参加者のアンケート調査の結果を分析を進めるなかで,先行研究のレビューでは得ることができない資料を得ることができた。保護者向け・支援者向けの研修プログラムや支援に役立つリーフレットの完成には至らなかったが,そこに含まれるべきコンテンツについてはある程度整理できたといえる。同時に,上述した資料を活かしながら,本人向けの心理教育プログラムの内容の整理も進めることができた。 このように当初の計画からはやや遅れているが,最終年度に向けての準備を着実に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,以下の通り,調査研究,支援者・保護者向け研修プログラムとリーフレットの作成,本人向けの心理教育プログラムのマニュアルづくりを進める。 まず,2020年度に計画したアンケート調査について,鳴門教育大学の倫理審査を受けたうえで一部修正して実施する。アンケート調査は,発達障害児者の親の会,特別支援学校,児童発達支援事業所等の協力を得て,中学生年代以上の発達障害・知的障害のある青少年の保護者100-200名を対象に,オンラインとオフライン両方で実施する。なお,同時期に数名の保護者を対象に,複数回のインタビューを実施する予定である。これらの調査により,発達障害・知的障害のある青少年のインターネット利用の実態と,トラブルに巻き込まれないために必要な要素が示されると考えている。 次に,保護者向け・支援者向けの研修プログラムと支援に役立つリーフレットの作成を行う。これまで行った文献のレビュー,2020年度に実施した研修会とアンケート調査の結果,2021年度に実施する保護者へのアンケート調査の結果から,内容を精査する。研修プログラムは複数回実施し,内容を調整する予定である。リーフレットに関しては,作成したうえで,関係諸機関に郵送で配布するとともに,ホームページで掲載するなど,オンラインで情報提供を行う予定である。保護者向けには,ペアレント・トレーニングの一貫として,あるいはペアレント・トレーニングの内容を参考にしながら,発達障害・知的障害のある保護者同士のグループで取り組むことができるワークの開発することができればよいと考えている。 さらに,本人向けの心理教育プログラムの内容の整理も行い,実際に発達障害・知的障害のある青少年に実施した上で,心理教育プログラムの簡単な実施マニュアルを作成する。
|
Causes of Carryover |
当初,資料収集や成果発表のために行く予定だった学術大会や研究会,研究協力者への聴き取り等が,Covid-19の感染拡大防止の観点から中止されたり,現地に行けなかったことにより,予定していた旅費を使わなかったことがまずは想定していたよりも経費が少なかった要因である。また,調査や心理教育プログラムの実施のための資料収集に時間をかけたこと,前述と同じくCovid-19の感染拡大の影響から,予定通りには準備が進められなかったり,オンラインで調査をすすめる準備にある程度時間が必要であったことから,2020年度中のアンケート調査・インタビュー調査の実施ができず,その分の経費が繰り越す必要性が生じた。 最終年度である2021年度は,上記の状況を十分に踏まえたうえで,主に調査に係る経費と成果報告に係る経費が必要である。アンケート調査,インタビュー調査に関する経費としては物品費や,データ分析・資料整理のための人件費・謝金,その他の経費としてアンケート用紙の郵送費,移動が可能であれば調査依頼やデータ収集のための交通費などが必要であり,成果発表・報告に関わる経費としては,リーフレットの印刷費・郵送費,ホームページへの掲載費,参加が可能であれば旅費や学会参加費などが必要である。
|