2021 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある青少年の適切なインターネット利用を促進する心理教育プログラムの開発
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19K14450
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
小倉 正義 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50508520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発達障害 / 知的障害 / インターネット利用 / 心理教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,発達障害・知的障害のある青少年のインターネット利用に関する心理教育プログラムの開発の基礎資料を得るために,昨年度から継続的に書籍や論文のレビューを行い,昨年度計画した発達障害・知的障害のある青少年の保護者向けのアンケート調査を修正し,倫理委員会の承認を受けた上で実施した。以下に具体的な内容を述べる。 まずは,書籍や論文のレビューから,発達障害のある青少年の過度のインターネット利用の要因として,インターネット利用を隠そうとすることや,ネガティブな親の声かけなどが関連していることが示された。次に,保護者向けのアンケート調査について述べる。アンケート調査は,①発達障害・知的障害のある青少年の利用と,利用におけるトラブルの実態を明らかにすること,②インターネット利用上のトラブルを解決した事例,トラブルを予防できた事例を収集し分析することで,トラブル解決や予防に必要な要素を明らかにすることを目的として行われた。親の会・児童発達支援事業所を通して発達障害・知的障害のある青少年の保護者にオンラインによるアンケート調査への回答を依頼したところ,85名の保護者から回答が得られた。その結果,インターネット利用に伴う出来事として,45.8%が「過度な使用による生活や体調への支障」,19.4%が「SNS・メッセージアプリでの対人関係のトラブル」を経験していることが示された。また,過度なインターネット利用を解決するための方策や普段の工夫について自由記述で回答を求めたところ,「約束の仕方」「ネット環境の調整」などに言及する回答がみられた。 これらの結果から,心理教育プログラムでは,①青少年だけでなく保護者に向けた内容を開発すること,②内容としては,「過度の使用の予防」と「SNS・メッセージアプリ上のコミュニケーション」に焦点を絞ることが有用であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は,上述した書籍や論文のレビュー,アンケート調査に加えて,①インタビュー調査の実施,②成果を学術研究会で発表すること,③心理教育プログラムの開発や支援に役立つリーフレットを作成することを当初の計画として入れていたが,この点については,Covid-19感染拡大の影響による移動の制限などの影響もあり,実施することはできなかった。また,アンケート調査の依頼に関しても,対面で研究の意義を伝える機会をもつことが難しかったこともあり,想定していた計画通りに進めることができなかった。 心理教育プログラムの開発や支援に役立つリーフレットの作成に関しては,これまでの資料の蓄積から内容についてはある程度整理できたため,次の1年間でここに重点をおいて研究を遂行する。また,心理教育プログラムの提供方法についても,対面やリーフレットの作成だけでなく,オンラインでの配信も視野に入れて再考することでより広く提供できるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を受け,2022年度は以下の通り,調査研究,本人・保護者向けの心理・教育プログラムの開発,支援者向けの研修内容の検討,リーフレットづくりを進める。 まず,2021年度に実施したアンケート調査については,目標数であった100名にみたなかったため,可能な範囲で追加でアンケート調査を実施する予定である。また,2021年度は実施できなかったが,過度のインターネット利用を解決した具体的な方策と,SNS・メッセージアプリ上でのトラブルを解決した具体的な方策に焦点をしぼり,インタビュー調査を実施する予定である。 次に,本人向け・保護者向けの心理教育プログラム,支援者向けの研修の内容を整理する。保護者向けのものに関しては,2021年度に計画していたように親同士のグループ学習で取り入れられるような形で考えている。また,同時に支援に役立つリーフレットの作成を行い,関係諸機関に郵送で配布するとともに,心理教育プログラムや研修の内容の情報とともにホームページで掲載するなど,オンラインでも情報提供を行う。
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Causes of Carryover |
当初,資料収集や成果発表のために当てられていた旅費を使用しなかったこと,成果物としてのリーフレット等が未完成のため印刷代やHP作成費がかからなかったことが次年度使用額が生じた理由である。2022年度は,調査研究のまとめと成果発表,心理教育プログラムや研修内容の公表,リーフレットの作成がメインになる。そのため,資料整理・データ分析のための物品費,人件費・謝金,成果発表のための学会参加費,リーフレット印刷代,HP作成費などが主な経費となる。また,移動が可能であれば,調査・成果発表ともに旅費が必要になる。
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