2022 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある青少年の適切なインターネット利用を促進する心理教育プログラムの開発
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19K14450
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
小倉 正義 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50508520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達障害 / 知的障害 / 自閉スペクトラム症 / インターネット利用 / 心理教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、引き続き書籍や論文、学会での情報収集を行った、また、2021年度に実施した調査に関して、自閉スペクトラム症(以下、ASD)のある青少年の保護者の回答に絞って再分析し、第63回日本児童青年精神医学会総会で、その成果を発表した。主な結果は以下の通りである。 まず、過度な使用による生活や体調への支障があった者のうち23.5%が解決したと回答し、解決方法としては主にストレッサーの調整や、他の行動に置き換えることに言及されていた。また、SNS上のトラブルがあった者のうち87.5%が解決したと回答し、解決方法としては先生や家族との相談等に言及されていた。なお、過度な利用やSNS上のトラブルの予防方法としてはルールづくりを始め様々な方法があげられた。 これらの結果から、本研究でASDのある青少年のネット利用の実態がある程度把握できたといえる。過去の総務省の調査等と比較すると,少なくともASDのある青少年で高い割合でトラブルが起こっているとはいえないと考えられる。また、精神科外来通院中のASD患者はインターネット依存のハイリスク児であること(宋他,2019)が先行研究で指摘されている点を考慮すると、インターネット利用上のトラブルと日常生活における全体的な適応状況との関連を今後検討する必要がある。さらに、調査結果から過度の使用に関しては解決まで至っている例は少なかったが、解決方法としては過度に利用する行動の機能を分析し、他の行動に置き換えることが重要であることが示唆された。 そして、書籍や論文、学会での情報収集、上記の調査結果等をふまえ、ASDをはじめ、その他の発達障害のある青少年へのインターネット利用に関する心理教育プログラムの試行(予備的実施)や内容の検討を積み重ねてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は、上述した書籍や論文のレビュー、アンケート調査に関する学会での成果発表に加えて,①追加の調査の実施、②インタビュー調査の実施、③心理教育プログラムの開発や支援に役立つリーフレットを作成することを当初の計画として入れていたが,この3点についてはCovid-19感染拡大の影響による移動の制限などの影響もあり,十分に実施することはできなかった。ただし、上述したように③の心理教育プログラムの開発や支援に役立つリーフレットの作成に関しては,書籍や論文のレビュー、アンケート調査の結果、心理教育プログラムの試行により、ある程度内容は吟味できている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を受け、2023年度は以下の通り、研究を実施する予定である。 まず、調査研究について述べる。これまで実施してきた保護者向けのアンケート調査については、ある程度結果が得られているが、追加実施することでタイプ別での分析が可能になるため、機会をとらえて実施する。また、数名を対象に過度のインターネット利用を解決した具体的な方策と、SNS・メッセージアプリ上でのトラブルを解決した具体的な方策に関するインタビュー調査を実施する。 次に、本人向け・保護者向けの心理教育プログラムや支援に役立つリーフレットづくりに関して、2022年度までに整理してきたものを形にする。具体的には、試作版を作成したうえで、児童精神医学・臨床心理学の専門家、学校教員、保護者等にその内容についての評価をもらい、内容を精査する。このような手続きを経てできた心理教育プログラムを発達障害のある青少年を対象に実施し、その結果や参加者の反応を踏まえてバージョンアップする。最終的な成果物については、ホームページを作成して内容をウェブ上で公開する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、資料収集やインタビュー調査、成果発表のために当てられていた旅費がCovid19の影響もあり、計画よりも少なかったこと,成果物としてのリーフレット等が未完成のため印刷代やHP作成費がかからなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 2023年度は、インタビュー調査の実施、心理教育プログラムの実施や公表、リーフレットの作成がメインになる。そのため、資料整理・データ分析のための物品費や人件費・謝金、インタビュー調査や情報収集、心理教育プログラムの実施のための旅費、成果公表のためのリーフレット印刷代・HP作成費などが主な経費となる。
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Research Products
(6 results)