2021 Fiscal Year Research-status Report
時間的階層構造を捉える予測的学習のニューラルネットワークモデリング
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19K14471
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 真孝 京都大学, 人と社会の未来研究院, 特定講師 (40838398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感情 / 新型コロナウィルス / 災害 / 畏怖・畏敬 / 予測 / 不確実性 / 幸福感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に投稿した、台風とコロナ危機による価値観の変化とそこにおけるawe感情の役割についての論文の改稿を進めた。現在、改稿したものが国際誌にて2回目の査読中となっている。具体的には、台風やコロナのような集合的脅威に対する反応として、逆説的だが幸福感が高まる可能性と、そこではawe感情を介して意味生成が惹起され、自己超越的価値の重要性が高まるという過程を示した。改稿では特に、自己超越的価値と幸福(特にユウダイモニア的幸福)との関係を理論的に精緻化した。 また、awe感情の変動性とその文化差について過年度に取得したデータの詳細な分析を進め、一部は国際学会で発表した。具体的には、awe感情を感情価と覚醒度の観点から検討するとともにその文化差を探った。その結果、awe感情は他の典型的な感情とは異なり、感情価も覚醒度も変動しうることがわかった。awe感情は、高覚醒快感情、低覚醒快感情、高覚醒不快感情のいずれとしても経験されうることがわかった。さらに、awe感情を低覚醒快感情として感じる傾向は日本よりも米国で強く、awe感情を不快(負の)感情として感じる傾向は米国よりも日本で強いことも示された。これらは感情というものが社会文化的に動的に構成されるものであるということを示すとともに、awe感情の変動性を定量的に記述する貴重なデータでもある。 さらに、awe感情の脳内基盤を探る方法を再検討し、当初想定していた脳波ではなくfMRIを用いた検討を進めることとし、刺激選定・予備実験の計画などの準備を行った。 これら学術的研究と並行してYoutubeでの講演などアウトリーチ活動も進め、企業等からも問い合わせがあるなど、社会的にも意義のある研究・広報活動の実績を積んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より、予測的学習における重要感情としてawe感情を想定し、それに関連する実証データを収集することを目的としていたが、当初予期していなかったコロナ危機によりawe感情の研究の重要性が増した。すなわち、コロナ危機とはこれまでの予測が大きく裏切られ、世界観や価値観が大きく揺さぶられる出来事であり、そこで生じるawe感情がどのような帰結を生むかは社会的にもより重要な問いとなった。そこでawe感情に関わる検討を重点的に進めた。 その結果、台風及びコロナ危機という集合的脅威における人々の反応とそこでのawe感情の役割に関するデータを収集し、その結果は論文にまとめて国際誌で査読中となっている。 またawe感情の感情価・覚醒度・文化差という観点からも基礎的な検討をすすめawe感情の理論的理解を進めており、重要な進捗であると言える。 次年度に向けて脳画像研究の準備も進行している。 さらに、研究成果のYoutube配信や日本語論文執筆(過年度)の結果、企業関係者等のアカデミア外からの問い合わせも複数来ており、アウトリーチの結果として社会的インパクトも広がっていると言える。 以上の通り、手段は柔軟に変更しつつ当初の目的を果たすためおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、査読中の論文の掲載を目指す。 さらに集合的脅威に対するawe感情のより実験的な研究を進め、意味生成の結果としての価値観の変化という観点から感動という感情にも焦点を当てた検討を進める。 awe感情の感情価・覚醒度・文化差に関するデータは追試的にデータを収集し再現性を確認しながら、国際誌への論文投稿・掲載を目指す。 awe感情を含めた感情の相互依存性についてのレビュー論文を執筆しており、掲載を目指す。 awe感情の神経基盤についても、既存の脳画像データとの紐付けを行う共同研究を開始しており、今年度までにその準備を行った。次年度はこれを推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行に伴い、対面での行動実験や脳機能測定を可能な限り自粛し、その代わりに論文執筆に注力したため、実験関連の謝金が予定よりも執行額が少なくなった。 また、国際学会の参加についてもオンライン参加を行ったため、旅費も予定よりも執行額が少なくなった。 次年度は、オンライン実験を中心にデータ収集を行うことで予定していた対面行動実験等に替える。 また、状況を見ながら対面での学会参加を行う。
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Research Products
(2 results)