2022 Fiscal Year Research-status Report
時間的階層構造を捉える予測的学習のニューラルネットワークモデリング
Project/Area Number |
19K14471
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 真孝 京都大学, 人と社会の未来研究院, 特定講師 (40838398)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 感情 / 新型コロナウィルス / 災害 / 畏怖・畏敬 / 予測 / 不確実性 / 幸福感 / 感動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に投稿した、台風とコロナ危機による価値観の変化とそこにおけるawe感情の役割についての論文の査読結果が返ってきたが、不採択となったことを踏まえ今後の改稿方針を検討した。 また、地震や台風などの集合的脅威に対する反応として、つながりに対する価値が変化し、つながりに対する感動をしやすくなるのではないかという仮説を検討する研究も行なった。すなわち、集合的脅威という非日常的で予想外であり不確実な状況では、価値観の変化が起こり、特につながりという価値を強めることが心理的な不確実性を低減するとともに、実際につながりの価値が高まった集団によって協力して集合的脅威に対応することで実際上の不確実性も低減できるという機能があると考えられる。この集合的脅威と感動の関係を調べるために、動画によって集合的脅威の認知を操作し、その後の感動の程度を調べた。結果として、集合的脅威の指標となる社会への影響の認知は感動の程度と相関するが、集合的脅威の実験操作の感動への効果はなかった。この成果を国際誌に投稿したが、不採択となった。 また、集合的脅威を実際にどの程度脅威として認知するかの文化差の研究も準備した。この研究は、温暖化・気候変動という地球規模での脅威やそれに伴ってローカルにおこる洪水などの脅威に地球規模で対処するための心理学的基盤を文化的多様性と普遍性の観点から検討する重要研究である。 さらに実験的にawe感情を操作するための画像を作成し、それの評定実験を行い、awe感情及びその他の感情についての評定値を得た。これによりawe感情の厳密な操作が可能となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より、予測的学習における重要感情としてawe感情を想定し、それに関連する実証データを収集することを目的としていたが、当初予期していなかったコロナ危機によりawe感情の研究の重要性が増した。すなわち、コロナ危機とはこれまでの予測が大きく裏切られ、世界観や価値観が大きく揺さぶられる出来事であり、そこで生じるawe感情がどのような帰結を生むかは社会的にもより重要な問いとなった。そこでコロナを含む集合的脅威とawe感情や感動に関わる検討を重点的に進めた。 本年度はそれに関連する論文の執筆及び投稿、新規の研究の準備を行なった。論文査読の結果自体は不採択であったが、論文としてまとまった形で投稿できたことには意義があると考えられる。実際、査読過程では有益なコメントを得ることができ、これを元に引き続き改稿を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、2本の投稿論文の改稿を進める。査読過程では有益なコメントを得られたためこれに従って改稿を進める。 集合的脅威の認知の文化差の研究についても、共同研究者との調整を進め、研究を実施する。 過年度に行なったawe感情を動画により喚起し、その感情価、覚醒度、その文化差を検討する研究について、実験を追加し、それを元に論文を執筆して投稿を行う。 今年度の画像評定の予備調査により選定した刺激を用いて、awe感情を画像によって喚起する方法を用いてawe感情の時間感覚への効果を検討する。
|
Causes of Carryover |
本年度は論文の執筆と改稿を中心に行なっており、予算執行の機会が少なかった。本年度に論文執筆・改稿に注力する方が効果的であると考え、予算執行を要するデータ取得等は次年度へ繰り越した。次年度には、研究補助のRA等への謝金、研究参加者への謝礼を中心に用いる。 また、当該課題についての国際共同研究を開始する機会に恵まれ、開始時期を考慮して次年度にまたがって実施する方が効果的に研究が行えると判断したため、次年度への繰越を行なった。当該国際共同研究においては、材料の翻訳等のRA謝金及び研究参加者への謝礼を中心に用いる。
|
Research Products
(1 results)