2022 Fiscal Year Research-status Report
主観強度のリアルタイム測定手法を用いた自己移動感覚の時間特性の実験的検討
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19K14486
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
金谷 英俊 人間環境大学, 総合心理学部, 講師 (20513039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自己移動感覚 / ベクション / 運動視 / 時間特性 / 個人特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,観察者が視野の広範囲に提示された視覚運動刺激を観察する場合に,観察者自身が移動したと感じる感覚(自己移動感覚,ベクション)について,観察者が感じた移動感の強度をリアルタイムでかつ連続的に報告させる手法によってベクション強度の時間的推移を計測し,ベクションの時間特性について明らかにすることを目的とするものである.前年度までの実験において,観察者の視野中心部から周辺部に向かって円形状の縞刺激が拡散していく視覚運動刺激を長時間提示し続けた場合でも,知覚されるベクションの強度は途中で低下せず,ほぼ一定の値を保ち続けるもしくは増加するという傾向を得ている.この知覚傾向は,ベクションの先行研究で報告されている,刺激提示中にベクションを一定時間感じなくなる「ドロップアウト」と呼ばれる現象の存在とは傾向が異なるものだとも言えよう.ベクション強度の増加とドロップアウトの生起傾向が,刺激強度等のパラメータによって変化し得るものなのか,それとも観察者の個人的な特性によるものが大きいのかに着目し,探索的な検討を行った.検討を進めるなかで,運動刺激の速度が速いほど移動感の感度が高くなる観察者と,実際の観察者自身の移動と同程度の速さの刺激に対して感度が高い観察者がいるという傾向の違いがあることを見出し,それに個人特性の違いが関わっている可能性について予備的な検討も進めた.次年度は本年度に得た予備的なデータから,ベクションの時間特性について引き続き検討するとともに,ベクションの生起に関連する観察者の特性と時間特性との関連についても研究を進めていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の令和3年度においても続く新型コロナウイルス感染の影響により,研究対象者(実験参加者)の所属機関への来訪および実験参加が減少して実験の遂行が制限されていたことに加え,前年度から本年度にかけて研究代表者が研究機関を移動したことにより,実験参加者の募集や実験設備の整備を含む研究実施環境の再構築が必要となった.そのため,研究の実施は実験計画に関する予備的な調査に加え,少数の実験参加者を対象とする予備的,探索的な実験的検討にとどまったことから,研究期間の再延長を申請するに至った.次年度は,本年度に構築した研究環境及び準備を重ねてきた実験計画をふまえ,必要な実験を着実に進めていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに取得した本実験のデータならびに予備的観察の結果を基に,ベクションの時間特性に関わる要因を解明すべく,引き続き実験的検討を進める.特に以下の2点に着目した検討を予定している.(1) 視覚運動刺激の特性とベクション知覚との関係である.上述したとおり,運動速度の速い刺激に対して感度が高い観察者と,実際の観察者自身の移動と同程度の速さの刺激に対して感度が高い観察者がいるという運動感度とベクション知覚傾向との間の関係性に着目し,運動刺激とそれに対する異なる感度をもつ個人特性,そしてベクション知覚の傾向の関係について,ベクション時間特性の変動要因を明らかにすることを試みる.(2) 視覚運動刺激観察中にベクションを感じないドロップアウトの生起について,本年度に検討できなかった点として,運動刺激強度の要因,そして刺激提示期間中の初めから終わりまでのいずれの期間で生じるものなのかといった時間的要因について,本研究で用いている手法を用いて詳細に実験的解析を行っていく.
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Causes of Carryover |
本年度に用いる実験装置や研究資料等を購入した一方で,参加を予定していた学会がオンライン開催となったために旅費の一部を使用しなかったこと,データ取得の遅れにより論文を執筆途中であること等により,本年度使用予定額を使い切るには至らなかった.次年度に繰り越された額は,次年度の研究課題遂行のための研究対象者(実験参加者)に対する謝礼,及び研究成果発表(学術論文の英文校閲費,掲載費,国内・国際学会参加費・旅費)等に使用する予定である.
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