2020 Fiscal Year Research-status Report
正標数の代数多様体のp-進的性質と代数幾何学的性質についての研究
Project/Area Number |
19K14501
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
呼子 笛太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特任助教 (10825095)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | フロベニウス分裂 / 準フロベニウス分裂 / F-特異点 / カラビヤウ / 有理二重点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は正標数の特異点とquasi-F-splitの関係について研究を行なった. Quasi-F-split理論はF-split理論を拡張するために導入されたものである.F-split性は1980年代にMehtaとRamanathanにより導入された概念であるが,同様の概念は可換環論においてそれ以前から研究されており,現在ではF-特異点論と呼ばれる一つの分野成長している.これまでquasi-F-split性は主にカラビヤウ多様体などの大域的な幾何学への応用を主眼において研究されてきた. 今年度は松本雄也氏のK3曲面上に存在するRDP(2次元有理二重点)のArtin coindexの研究に触発され,RDPのquasi-F-split heightの研究を行なった.特に全てのRDPがquasi-F-splitであることを示した.これは標数が7以上の時RDPがF-splitであることの拡張である. この研究により双有理幾何学やF-特異点論においてもquasi-F-split性が興味深い概念になる可能性が生まれた.この方向性を追求するために田中公氏とJakub Witaszek氏と共同研究を開始し,klt特異点など双有理幾何学などで重要となる特異点とquasi-F-split性との関係を調べ一定の成果を得た.またquasi-F-split性に対するいわゆる同伴/逆同伴問題に取り組み,こちらも一定の結果を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究は,開始当初は大域的な多様体の研究のため,F-split性を拡張することから始まった.F-split性は正標数の特異点論において活発に研究されてきたが,quasi-F-split性が局所的な状況で興味深いものであるかは判明していなかった.しかし本年度の研究により,quasi-F-split性が局所的な状況においても有意義であることへの確信を深めた.特に有理二重点などの具体例に対する計算と,同伴/逆同伴といった一般論の両面において一定の理解を得たので,おおむね順調であると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も双有理幾何学やF-特異点論において重要となる論法とquasi-F-split性の関係について,主に,田中公氏とJakub Witaszek氏との共同研究で進める.また強F-正則性の拡張を導入する課題に取り組む. また初年度に取り組んだquasi-F-split性とSerre-Tate理論の関係の研究を再開,発展させる.
|
Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスの世界的流行により,予定されていた出張が全てキャンセルとなったため,出費が少なくなり,次年度使用額が生じた.翌年度も出張旅費が少なくなることが予想されるが,一方でオンラインによる研究活動が大幅に増えたため,そのための環境構築に使用する予定である.
|