2022 Fiscal Year Research-status Report
正標数の代数多様体のp-進的性質と代数幾何学的性質についての研究
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19K14501
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
呼子 笛太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特任助教 (10825095)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フロベニウス分裂 / 準フロベニウス分裂 / F-特異点 / カラビヤウ多様体 / klt特異点 / ファノ多様体 / 正標数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も主に,河上龍郎氏, 高松哲平氏,田中公氏,吉川翔氏とJakub Witaszek氏と共同で準F-分裂性の研究に取り組んだ. 準F-分裂性は,正標数の可換環論や代数幾何学などで盛んに研究されてきたF-分裂性という概念を拡張したものである.この共同研究では,準F-分裂性の双有理幾何学的側面について研究を行った. 特に双有理幾何学において現れる特異点との関連性について研究を行った.指針となる先行研究は,Hacon-Xuによる標数7以上の場合の3次元MMPの解決であり,その際決定的であった事実は,2次元klt特異点が標数7以上においてF-分裂であるという結果である.以上を踏まえて,本年度は以下の結果を得た: (1)2次元のklt特異点が全ての標数で準F-分裂であることを示した.(2)3次元のklt特異点が標数が42より大きい時,準F-分裂であることを示した.またこの主張が標数41では成り立たないことを,反例を構成することで示した.以上の結果は2本のプレプリントとして公表し,学術誌に投稿中である. 今後の主な課題は,準F-分裂性とlog canonicalとの関係の解明や,F-正則性を拡張した準F-正則性を導入しその性質を研究することである. また準F-分裂性とHodge-Witt性の(幾分予想外の)類似性を発見した.Hodge-Witt性とはde Rham-Witt複体を構成する層のコホモロジーの有限性で定義される,p-進コホモロジー論において導入された概念である.この概念の多様体の積に関する振る舞いに関するEkedahlの結果の類似が準F-分裂性に対して成り立つことがわかった.この結果は現在論文として執筆中である. またprismaticコホモロジー論とF-分裂理論との関係を明確にするため,いくつかの観点から考察した.特にFrobenius-Witt微分とF-分裂性についていくつかの結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究において準F-分裂性について双有理幾何学的観点からの研究が大きく発展した.特に3次元klt特異点に関する結果により,準F-分裂性が双有理幾何学において有用である大きな証拠が得られた.またF-正則性の拡張である,準F-正則性についても非常に良い結果が得られた. 一方準F-分裂性の数論幾何学的観点からの研究については,大きな進展を得られなかった.近年大発展を遂げているprismaticコホモロジー論関連についてリサーチすることに大きな時間を割いたことが一つの要因である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは準F-分裂性の双有理幾何学的観点からの共同研究を進める.特にF-特異点論の観点から,準F-正則性とCohen-Macaulay性やF-分裂閾値について,より深い研究を推進する予定である.また新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い対面での議論を活発に行う予定である. また数論幾何学的観点からは,saturated de Rham-Witt複体に注目し,双対性についてのEkedahlの結果の拡張について考察する.これがある程度できたら,準F-正則性の研究に結びつける予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の見通しが不明であったため,出張計画をたてづらく当初予定していた規模での出張が組めなかった.5類以降に伴い,より長期的な研究議論のための出張を行う予定である.
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