2021 Fiscal Year Research-status Report
連接層の導来圏への基本群作用と安定性条件の空間の研究
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19K14502
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平野 雄貴 京都大学, 理学研究科, 助教 (50804225)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 擬対称表現 / 傾斜加群 / 素thick部分圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
Halpern-LeistnerとSamによって、代数群Gの擬対称表現Xに付随する窓部分圏が、ジェネリックなG-同変直線束に関するXのGIT商の導来圏と同値になることが示され、固定したGIT商の導来圏を通じて窓部分圏たちの間に圏同値が誘導されることが証明された。さらに、この窓部分圏の間の圏同値によって弦理論的ケーラー・モジュライ空間の基本群が窓部分園に作用することが示された。当研究の目的はGが代数的トーラスの場合に、この基本群の作用が忠実であることを示すことであった。 本年度は原和平氏と共同で、Gが代数的トーラスの場合にHalpern-LeistnerとSamによる窓部分圏の間の圏同値が、ある非可換代数上の傾斜加群が誘導する圏同値と関手として同型となることを証明した。ここで現れる非可換代数は、擬対称表現Xのアフィン商Yの非可換特異点解消であり、圏同値を誘導する傾斜加群は各窓部分圏が持つ自然な傾斜対象から得られるものである。この結果は、窓部分圏の間の圏同値を非可換代数上の傾斜加群の言葉に翻訳するものであり、これにより非可換代数の表現論を本研究に応用することが可能となった。 本年度はさらに大内元気氏と共同で、代数多様体の導来圏の素thick部分圏について研究した。素thick部分圏は松井により近年導入された概念で、素thick部分圏全体のなす集合は自然な位相を持つ。我々はこの位相空間を松井スペクトラムと名付け、楕円曲線の導来圏の松井スペクトルを完全に決定した。さらに、松井スペクトラム内のSerre不変領域という領域に着目することで、Bondal-Orlovによって示されたファノ多様体の導来同値から元のファノ多様体の間の同型を再構成するという古典的な定理の別証明を与えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった基本群の作用の忠実性までは証明できなかったが、それに至るための重要なステップである窓部分圏の間の同値が傾斜加群が誘導する圏同値に対応することの証明は達成できた。また、当初は想定していなかった結果を大内氏との共同研究で得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は基本群の作用の忠実性を証明するために、より深く窓部分圏の間の同値を研究していく計画である。具体的には、窓部分圏の間の圏同値に対応する傾斜加群たちが、伊山-Wemyssによる変異という操作でつながることの証明を原氏と共同で目指す。 また、引き続き大内氏との共同研究において、素thick部分圏の研究を続けていく予定である。特に、有限群の作用を持つ代数多様体の同変連接層の導来圏の松井スペクトラムについて研究していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、計画通り出張することができなかったため。
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