2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岸 亮 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (00825630)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クレパント特異点解消 / モジュライ空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は研究課題であるシンプレクティック特異点について、その良い特異点解消が何らかのモジュライ空間として具体的に構成できるかどうかという問題について主に取り組んだ。良い特異点解消とは具体的にはクレパント特異点解消と呼ばれるものであり、先行研究によって特別な場合においてはそれらがモジュライ空間としての記述を持つことが知られていたので、その一般化を目指した。この問題はMcKay対応と呼ばれる重要な問題と深く関わっており、代数多様体という幾何学的な対象に表現論的な理解を与えるという動機に基づいている。 この問題を一般のシンプレクティック特異点に対して扱うのは困難なので、シンプレクティック特異点と比較的似た性質を持つアーベル商特異点と呼ばれるものに対して同様の問題に取り組んだ。この場合、クレパント特異点解消は有限アーベル群Gに対してG-constellationのモジュライ空間と呼ばれるものとして構成されると期待されている。 当該年度の研究において、このようなモジュライ空間としての構成を与えるためには、群Gに適当な条件を満たす数値的情報を付与すればよいことを示した。また、クレパント特異点解消を通常考える際は技術的な理由からそれが射影的であるという条件を課す場合が多いが、本研究では必ずしも射影的ではない特異点解消もモジュライ空間としての記述を持ちうるということを示した。 これらの結果は国際的な研究集会などにおいて発表した。また、当該年度は、前年度までに得た結果についても講演発表し、執筆した論文の改訂を経て専門誌に掲載されるなどした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に主に取り組んだ課題である、クレパント特異点解消の(表現論的な対象の)モジュライ空間としての具体的な構成は一般には難しい問題であり、先行研究においても次元が低い場合など特殊な場合でしか達成されていない。しかし、本研究ではこの問題に対する新たなアプローチを見出しており、その有効性を確認した。また、本研究の手法はより広い範囲の特異点に対しても適用可能であることが明らかになりつつあり、研究課題の進捗についてはおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究において用いた手法は一般のシンプレクティック特異点に対しても適用可能であると考えられるので、これを具体的に実行することで研究をさらに進めていきたいと考えている。特に箙多様体と呼ばれるシンプレクティック特異点については先行研究によってその性質が深く調べられており、上記の手法を適用するのに都合が良いと思われる。こういった例をうまく活用することで研究課題が遂行されると期待している。 また、この手法を利用することで、クレパント特異点解消の幾何学的な性質を表現論的な観点から記述できるようになることを目指す。
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Causes of Carryover |
本来交付額の内の大部分を研究集会の参加のための旅費に充てる予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、海外のみならず国内の出張すら不可能になった。このため旅費の支出が全く無くなり、次年度使用額が大きく生じた。 2021年度は新型コロナウイルスが収束するか不透明だが、オンラインでの研究集会が多く行われると考えられるので、次年度使用額は主にその環境を整えるために使用したいと考えている。
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