2019 Fiscal Year Research-status Report
総実代数体上への志村谷山予想の一般化とアーベル曲面の保型性への応用
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19K14514
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉川 祥 学習院大学, 理学部, 助教 (10803736)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 楕円曲線 / ガロワ表現 / モジュラー形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目標として、志村谷山予想の直接の一般化、すなわち「総実代数体上で定義された楕円曲線に対して保型性(ヒルベルト保型形式と結びつく性質)」を証明することが挙げられる。定義体が有理数体のアーベル拡大である場合にはある程度満足な結果が得られていたので、アーベル拡大でない場合に結果を拡張することが目的であった。保型性を示す際は楕円曲線の3,5,7等分点のなす表現E[3],E[5],E[7]が可約である場合が本質的な困難であるが、このような困難が生じないような定義体をうまく見付ける(定義体に課すべき扱いやすい条件を見付ける)というアプローチを採った。このもとで、以下のような結果を得た。 (1)Mazur-RubinによるDiophantine stabilityと呼ばれる理論(大域体上で定義された曲線やアーベル多様体の有理点が体拡大によって増大しないための条件を与えるもの)を、具体的なモジュラー曲線に適用することで、定義体に課すべき局所条件を見出した。 (2)良い素点におけるフロベニウス元が表現E[3],E[5],E[7]にどう作用するかを計算した。この計算のアイディア自体は前年度も用いたものだが、より網羅的かつ整理された計算を実行することによって、次のような成果を得た: a.剰余体の位数が2,3,4,8,13,16,または47であるような素点において、楕円曲線が潜在的に良い還元を持つ場合に、その楕円曲線が保型的であることを証明した。(これまでは13と47のみ見付かっていたが、リストを増やすことに成功した。更にこのリストが本アプローチで得られる最良の結果であることも分かった。) b.剰余体の位数が素数であり105を法として26,41,59,89,101,104のいずれとも合同でないような素点において、楕円曲線が潜在的に超特異還元を持つ場合に、その楕円曲線の保型性を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来はすでに論文の形にして投稿しているべきだったが、結果(1)が現時点でプロトタイプ的な定理の形でまだ改善の余地があり、論文として仕上がっていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
結果(2)のアプローチでは、恐らくこれ以上新たな成果を得ることが難しいと思われるので、今後は結果(1)のDiophantine stabilityを用いるアプローチを進めていく。このアプローチは、一般論を具体的な状況(それ自体が楕円曲線でもあるモジュラー曲線)に適用するものであるがゆえに、その特別なモジュラー曲線に限ればより強い結果が得られると期待している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、3月の出張計画が取りやめとなったため。今年度も見通しが立たない状況なので計画を立てることが困難であるが、少なくとも国外出張が出来る見込みはないので、必要に応じて国内出張の費用や備品の購入に充てる予定である。
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