2021 Fiscal Year Research-status Report
総実代数体上への志村谷山予想の一般化とアーベル曲面の保型性への応用
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19K14514
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉川 祥 学習院大学, 理学部, 助教 (10803736)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 楕円曲線 / モジュラー形式 / ヒルベルトモジュラー形式 / モジュラー曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も引き続き、「楕円曲線の保型性」に関する研究を行った。ここでいう保型性とは、楕円曲線のL関数が或るモジュラー形式(より一般に保型表現)のL関数に一致するという性質であり、代数体上で定義された楕円曲線は必ずこの性質を持つことが期待されている、本研究の一つの目的は、より多くの楕円曲線に対してそれを証明することであった。 本年度は、伊藤哲史氏(京都大学)と石塚裕大氏(京都大学)と共同研究を行い、総実5次体上の楕円曲線の保型性に関する結果が得られた。これまでの先行研究において、低次の(総実)代数体上の楕円曲線の保型性の問題は、3次以下では完全に解決され、4次の場合にも定義体が5の平方根を含まない場合にはすべて解決されている。この意味で、本年度得られた結果はこれらの先行結果の次の段階と言える。 我々が得た結果をより詳しく述べると、あらゆる総実5次体上のさまざまな楕円曲線のうち、高々有限個の楕円曲線(正確にはj不変量)を除いたすべての楕円曲線が保型性を持つことを証明した。ただし、除かれた有限個の楕円曲線に関する具体的な情報(個数や定義体やj不変量)は得られていない。 別の先行結果として、以下のものがある:総実代数体$F$を固定したとき、$F$のあらゆる総実二次拡大上のすべての楕円曲線のうち、高々有限個を除いたすべての楕円曲線は保型性をもつ。本年度の結果はこれの変種であり、手法も(より発展させたものを用いているが)近いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に想定していた方法とは別の手法ではあるが、研究課題へのアプローチが出来、結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的(楕円曲線の保型性)自体に大きな変更はないが、まずは本年度得られた結果の手法や見方をより発展させたアプローチに取り組みたい。本年度、有理数体上の5次拡大を考察したことの関連として、別の体$F$の$n$次拡大($n$は小さい自然数)上の楕円曲線に関して同様の結果が得られないかを現在考えている。この一般的な状況では安直には議論がうまく行かないが、体$F$を上手く選ぶ(たとえば円分$\mathbb{Z}_p$拡大の部分体)ことにより(別の困難は生じるが)結果が得られそうである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で出張の機会が減ったため差額が生じた。使用計画としては基本的に出張費に充てるが、研究発表の機会や共同研究の機会を作ることが第一である。また、状況に応じて海外への渡航も検討する。
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