2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14521
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
國川 慶太 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10813165)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | エントロピー / 平均曲率流の単調量 |
Outline of Annual Research Achievements |
平均曲率流の本質的な特異点を測る指標として、Colding-Minicozzi(2012年)の導入したエントロピーという量がある。エントロピーは部分多様体に対して定まる大域的な量であり、平均曲率流に沿って単調に減少する。このエントロピーを用いれば、特異点の複雑さを測ることができる。つまりエントロピーの値が小さいほど特異点はシンプルな形状で、より本質的なものであると言える。
このような背景に基づき、研究代表者はエントロピーを用いた平均曲率流の特異性研究に着手した。まずは当初の研究計画に沿って、様々な具体例に対してエントロピーの計算を試みた。しかしこれは多くの場合、技術的に不可能であった。そこで、すでに知られている他の単調量とエントロピーとの関係を調べる方針に切り替えた。その結果、Ecker(2001年)の導入した単調量とエントロピーが古代解(つまり特異点モデル)上、無限遠で一致するという結果を得た。Eckerは熱方程式でよく知られている平均値定理を平均曲率流に拡張することにより、この単調量を得ている。Eckerの単調量は、時空のボール上で平均を取るという意味で局所的な量である。したがって2つの量が漸近的に一致するという結果は、エントロピーがEckerの量によって局所化可能であることを意味する。
また、この結果とCalle(2007年)による古代解の余次元評価を組み合わせれば、間接的ではあるが、Colding-Minicozzi(2019年)と同様のエントロピーによる古代解の余次元評価を得る。このことは、扱いが困難な余次元の高い平均曲率流において、本質的な特異点、つまり低エントロピーのものに焦点を絞れば、余次元による困難さを回避できる可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、平均曲率流のII型特異性の性質を調べるためにエントロピーを用いる予定であった。そのためにII型特異点のモデルであるトランスレーティングソリトンに対して、具体的にエントロピーの計算を試みたが、技術的な困難により断念した。現時点で、II型特異性の研究にエントロピーが有効であるという確証は得ていない。
その一方で、2019年度の研究ではエントロピーとEckerの単調量の関係性を明らかにした。この関係性を用いれば、II型特異性の性質をこれまでとは別の視点でも捉えることができるため、今後の研究の進展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究で明らかにした、エントロピーとEckerの単調量の関係性を用いて、改めていくつかの具体例に対してエントロピーの計算、評価を試みる。また、今後は本質的な特異点である低エントロピーのものに焦点を絞り研究を進めていく予定であるが、その際にもEckerの単調量の視点を取り入れて考察をする。Eckerの単調量は大域的な量であるエントロピーの局所化になっており、エントロピーに関する様々な評価の精密化に適していると考えられる。エントロピーの精密な評価を通して、II型特異性の性質を明らかにしていきたい。
|