2021 Fiscal Year Research-status Report
向き付け不可能曲面の写像類群における組合せ論的群論の観点からの研究
Project/Area Number |
19K14542
|
Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
小林 竜馬 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 講師 (90759408)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 向き付け不可能曲面の写像類群 |
Outline of Annual Research Achievements |
向き付け可能閉曲面のレベル 2 写像類群は Dehn ツイストの 2 乗のみで生成されることが知られている。一方、向き付け不可能閉曲面のレベル 2 写像類群はそもそも Dehn ツイストのみで生成不可能である。そこで、Dehn ツイストが生成するこの群の部分群(レベル 2 ツイスト部分群と呼ぶ)を考え、その群が Dehn ツイストの 2 乗で生成可能かどうかを調べた。この問題を解決するために、Dehn ツイストの 2 乗が生成する部分群と Tolleri 群の積を考え、その群によるレベル 2 ツイスト部分群の剰余群を調べた結果、有限アーベル群になることが分かった。つまり、レベル 2 ツイスト部分群は Dehn ツイストの 2 乗のみでは生成不可能であることが結論づけられた。これは、向き付け可能曲面の写像類群と向き付け不可能曲面の写像類群が持つ性質の違いを表す結果である。 また、応用として、Dehn ツイストの 2 乗が生成する部分群と Tolleri 群の積の具体的な有限生成系を与えた。さらに、向き付け不可能閉曲面上の非分離な単純閉曲線へのレベル 2 写像類群による作用に関する結果も得られた。具体的には、2 つの非分離な単純閉曲線がレベル 2 写像類群の元で移り合うことと、それらの曲線の位数 2 の 1 次ホモロジー類が一致することは必要十分であることを示した。 これらの結果は、向き付け不可能閉曲面の Torelli 群の生成系を調べる研究において大きな役割を演じることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、育児のための短時間労働制度を利用した業務形態を5ヶ月間続けていた。そのため、研究に従事できる時間にも限りがあり、当初の予定よりも研究がやや遅れる結果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
向き付け不可能閉曲面の Torelli 群の有限生成可能性について調べる。そのために、向き付け不可能閉曲面の写像類群の部分群で Torelli 群を部分群として含むものについて調べる。そのような部分群として、向き付け不可能閉曲面のレベル付き写像類群や、Dehn ツイストの累乗が生成する部分群と Tolleri 群の積などが挙げられる。当該研究ではこれらの群の生成系について調べる。具体的には、これらの群と整数係数特殊線形群のレベル付き主合同部分群との関係を利用する。また、その中で、レベル付き写像類群と Dehn ツイストの累乗が生成する部分群の関係についても調べる。
|
Causes of Carryover |
前年度に急遽5ヶ月間ほど育児のための短時間労働制度を利用したため、当初の予定より研究に従事する時間が確保できなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。次年度は主に、学会等への参加、研究打ち合わせの旅費に予算を使用する予定である。また、専門図書の購入も予定している。
|
Research Products
(4 results)